結果
図1によると、自我関与度高条件において、再生時間は、再生順1が47秒、再生順4が50秒であり、再生順2の38秒、再生順3の39秒と比べて時間が長かった。
図1によると、自我関与度中条件において、再生順1が37秒、再生順2が41秒、再生順3が27秒、再生順4が11秒であり、再生順2を最長として、再生順3、再生順4と減少した。
図2によると、自我関与度高条件において、再生率は、再生順1が80%、再生順2が70%、再生順3が50%、再生順4が40%と減少した。
図2によると、自我関与度中条件において、再生順1が50%、再生順2と再生順3が40%、再生順4が20%と、再生率が減少した。
図2によると、自我関与度高条件と自我関与度中条件を比較すると、再生率において、一様に自我関与度高条件が高かった。
表1によると、自我関与度高条件の水準化は再生順1において1ディテール、再生順2、再生順3、再生順4において0ディテールであった。強調化は再生順1において6ディテール、再生順2において5ディテール、再生順3において4ディテール、再生順4において0ディテールと減少した。同化・合理化は再生順1、再生順2、再生順3において2ディテール、再生順4において6ディテールであった。
表2によると、自我関与度中条件の水準化は再生順1において2ディテール、再生順2、再生順3において1ディテール、再生順4において0ディテールであった。強調化は再生順1において2ディテール、再生順2において1ディテール、再生順3において2ディテール、再生順4において3ディテールであった。同化・合理化は再生順1、再生順3、再生順4において2ディテール、再生順2において4ディテールであった。
表1、表2より、水準化は自我関与度高条件よりも自我関与度中条件の方が多く生じた。強調化は自我関与度中条件よりも自我関与度高条件の方が多く生じた。同化・合理化は同程度で生じた。
考察
<変容が生じた理由>
自我関与度中条件が自我関与度高条件よりも水準化が多いのは、正確に記憶するのが困難なため、記憶内容が平坦になると考えられる。
自我関与度高条件において、再生順1、再生順2、再生順3について強調化が多く生じた。この理由として、被験者において題材が身近な内容の為、情報内容からいくつかの要素が選択的に保持されつつ、簡潔でよい形に情報の変容が行われたからと考えられる。
自我関与度高条件の再生順4および自我関与度中条件の再生順2の同化・合理化が多いのは、再生時間を長く使用するなかで、個人の知識や経験を用いて再生したものだと考えられる。
<社会場面で生じる流言や噂>
今回の実験では、いずれの条件においても再生率は減少したが、現実の社会場面で生じる流言や噂の変容では、余計な情報が付加されることが多いと考えられる。
今回の実験では、題材を一人から一人へ伝え聞いたが、現実の社会場面では複数の人により情報が伝達される事が多い為、同化・合理化が生じやすいと考えられる。
今回の実験では、いずれの条件においても矛盾のない題材であった為、強調化が見られたが、現実の場面では矛盾する情報があれば、自分の経験や知識に照らし合わせて、情報を同化・合理化し修正すると考えられる。
<社会還元>
再生に従ってディテールが減少していった事から、重要な情報は短いディテールで簡潔にまとめ伝えた方が、再生率が高くなり望ましいと考えられる。
伝えたいことは、高条件の方が伝わりやすいので、相手にとって、自我関与度の高い内容となる表現で伝えた方が良いと考えられる。
伝えたいことはテーマを先に伝えることで、自我関与度を上げると良いと考えられる。
再生率の低下を防止するには、何回か繰り返し伝えると良いと考えられる。
伝達において不要なトラブルを起こさないようにするには、相互に情報を確認しあうことが重要である、と考えられる。