私が小説というジャンルの中で、初めて読んだ本が「小公女セイラ~リトルプリンセス~」(フランシス・ホジソン・バーネット原作、河原れん訳、株式会社SDP)だった。8年前、小学3年生のときである。小公女は、私を文学の虜にしたきっかけの作品だ。小公女の主人公であるセイラも私も、文学によって「孤独」から救われている。文学は想像力を豊かにし、「孤独」から開放してくれるものなのだ。
そもそも文学的経験とはなんなのだろうか。文学の新教室によると、「同じ作品を読んでも人によって享受の差が生じるので文学的経験は個人に特有の独自性がある」「日常的経験と対照的な一回性のもの」とある。つまり、文学的経験とは、他人とは違う自分独自の日常的な経験とは異なった経験を指すのだ。
まず、小公女のあらすじを説明しておきたいと思う。インドの富豪ラルフ・クルー大佐の娘セイラは勉学のためイギリスへ渡り、ミンチン女学院に預けられる。特別待遇される大金持ちの身でありながら、生来の優しさで周囲の人間の誰にもわけ隔てなく接するセイラはすぐに学院一の人気者になった。ところがセイラの誕生日に、父親がインドで事業に失敗して破産したうえ、熱...