慶應通信 西洋史概説 西洋中世におけるモノと人の移動について

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    西洋中世におけるモノと人の移動について

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    1. はじめに
     ヨーロッパ中世中期から中世盛期における都市の形成と発展には、モノと人の移動が大きく寄与している。以下本論において、中世中期から盛期にかけて、「聖遺物」と「巡礼者」の移動が都市にもたらした意義について論じる。

    2. 聖遺物
     2.1. 聖人崇拝と聖遺物
      カトリック教会において、聖人とは「生存中にキリストの模範に忠実に従い、その教えを完全に実行した人たちのことであり(注1) 」、「教会が聖人として公に認めるということは、天国の栄光の中にいること、全世界の人々がその聖人に取り次ぎを願ってよいこと、崇敬するに値し、世界中の全教会で公にこの聖人の日を祝うことになることを意味 (注2)」するという。そして聖遺物とは、それらの聖人の骨や持ち物のことであり、その聖人の功徳が宿るとされている。「天にましますわれらの神よ」という文句の通り、唯一神に祈り願うカトリック信者は、神が自分の近くにはいない遠い存在だと理解している。しかし物理的に接近できる聖遺物は、信者が直接見たり触ったりできるという点で、「キリストをはじめとする聖なる存在の実在性や聖書が語る出来事の証拠(注3)」として、信...

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