監査論の最終レポートになります。A+評価でした。レポートテーマは次となっております。
監査法人の機能を高めるため、現行の公認会計士法はどのように構築されているか?体系的に論じなさい。(2000字程度)
一部抜粋
……平成19年度改正の公認会計士法は、監査法人制度そのものの強化と独立性の強化から構築されていた。公認会計士監査が有効に機能するためには、独立した立場で組織的に行う必要があろう。つまり、どちらも欠かすことのできない要素である。監査法人制度をハードとみなすならば、独立性はソフトとみなすこともできる。今後も、ハードとソフトの両面で改正の努力が行われるだろう。
以上のように結論付けました。
監査法人の機能を高める2つの視点
―平成19年改正の公認会計士法の構成から―
はじめに
監査法人機能の強化という視座に立つと、平成19年に改正された公認会計士法は、2つの側面を持つことがわかる。ひとつが、監査法人制度そのものの強化であり、もうひとつが、監査人の独立性の強化である。本稿では、この2つの視点から、現行の公認会計士法が、監査法人の機能を高めるために、どのように構築されているのかを論じていく。
監査法人体制の強化
監査法人制度は、複数の公認会計士による組織的な監査を推進するための共同組織体として、昭和41年に創設された[池田・三井, 2010, p.31]。平成19年度改正では、①品質の向上、②責任の在り方を巡って改正が行われた。
品質の向上
監査の品質を向上するために、①業務管理体制を整備する義務、②監査法人の社員資格の公認会計士でない者への拡大という措置が講じられた。
①は、平成15年改正に義務付けられたが、平成19年度改正では、監査法人による整備状況に関する情報開示が新たに義務付けられた。このような開示を通じて透明性を高め、市場規律を働かせることにより、監査法人による業務管理体制の整備の促進が期待される[池田・三井, 2010, p.45]。
②の目的は、適切な業務運営を確保し、実効性のある組織的監査を実施するめに、監査法人において、経営・財務、内部統制、ITなどを含めて広範な知識と経験を求める点にある。この非公認会計士社員を「特定社員」と呼ぶ。ただし、監査法人制度が、本来、公認会計士監査を組織的かつ適正に行うために設けられていることにかんがみ、社員に占める公認会計士の割合や理事等の業務運営に関する意思決定機関の参加者に占める公認会計士の割合等については、一定の下限を設けることが必要である。たとえば、監査法人のうちに公認会計士である社員が、75%以上を占めていなければならない。2項業務(非監査証明業務)の充実を図ったといえよう。
責任の在り方
監査法人の新しい形態として、「有限責任監査法人」が認められた。この背景には、無限連帯責任の過酷さがある。監査法人の社員が無限連帯責任であるとされており、監査法人の財産だけで弁済できない債務がある場合は、非違行為に関係しない社員を含むすべての社員が連帯して弁済する責任を負うとされていた[池田・三井, 2010, p.31]。そこで、非違行為に関係しない社員については有限責任化の途を開いていくことが適当と考えられた。それが、有限責任監査法人である。財産的基礎を確立するため、登録と供託が義務得づけられている。最低資本金は、100万円×社員総数であり、供託金は、200万円×社員総数である。無限連帯責任を負うのは、業執行社員(指定有限責任社員)以外にも、その他証明業務に関与した社員(たとえば、レビューパートナー)も含まれる点が特徴である。
似たような制度として、「指定社員制度」がある。指定社員制度が設立された目的も、非違行為に関連しない社員の責任軽減にある。有限責任監査法人との違いは、非監査会社からの賠償請求については、業務執行社員(指定社員)のみが無限連帯責任を負うが、一般投資家等の善意の第三者による賠償席級では、全社員が無限連帯責任を負う点にある。
監査人の独立性の強化
公認会計士による監査は、非監査会社等と利害関係のない独立した公正な第三者の立場で行われることによって、その公正性と信頼性が確保されるものである[池田・三井, 2010, p.79]。この独立性は、精神的独理性と外観的独立性に大別できるが、前者は立法により形式的に規制不能な領域であり、公認会計士法は後者を規制している。規制の主な内容は、①社員の競業禁止義務、②業務制限、③独立性への脅威の排除に分けられる。
社員の競業禁止規定
監査法人における社員の競業禁止の規制については、この存在が個人の公認会計士による組織化を敬遠させているのではないかという指摘がある。つまり、中小監査法人や個人監査法人では、競業禁止への反対が強かった。したがって、平成19年度改正によって、全社員の同意があれば、当該監査法人の社員が非監査証明業務を、非監査会社以外に提供することが容認された。ただし、監査法人の社員が大会社等から非監査証明業務により継続的な報酬を得ている場合、監査法人が当該大会社に対して監査証明業務を提供することは禁止されている。
業務制限
業務の制限としては、ローテーション・ルールが有名である。非監査会社と癒着を断ちつつも、知識・経験の蓄積が中断されコストが生じるといった問題点との適切なバランスが必要である。わが国では、継続監査期間7年、監査禁止期間2年とされているところ、大規模監査法人において上場企業の監査を担当する主任会計士については、継続監査期間5年、監査禁止期間5年とされている。就職に関しても制限があり、監査証明を行った事業年度の翌事業年に当該監査企業の幹部に就任することは禁止されている。
独立性への脅威の排除
監査人の交代や報酬を巡っての対立は、独立性の脅威になるおそれがある。したがって、監査報酬の有価証券報告書等への開示を義務付けるとともに、監査人交代時には、臨時報告書に意見を載せるようにした。
おわりに
以上で述べたように、平成19年度改正の公認会計士法は、監査法人制度そのものの強化と独立性の強化から構築されていた。公認会計士監査が有効に機能するためには、独立した立場で組織的に行う必要があろう。つまり、どちらも欠かすことのできない要素である。監査法人制度をハードとみなすならば、独立性はソフトとみなすこともできる。今後も、ハードとソフトの両面で改正の努力が行われるだろう。
参考文献
池田唯一・三井秀範(監修)(2010)『新しい公認会計士・監査法人制度―公正な金融・資本市場の確保に向けて―』第一法規出版社。
(レポートテーマ)
監査法人の機能を高めるため、現行の公認会計士法はどのように構築されているか?体系的に論じなさい。(2000字程度)
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