中央大学法学部通信教育課程 2022年度民法総論レポート第3課題
課題3
民法は公信の原則を不動産と動産の関係についてどのように位置づけているかを述べ、併せて民法94条2項の類推解釈と公信の原則の関係について具体例を挙げて述べなさい。
1. 「即時取得」及び「公信の原則」について
動産では、占有者が所有者とは限らないため、民法は公示を信頼して取引関係に入った者の取引の安全を図るため、取引相手が動産を占有することから相手方に所有権があると過失なく信じて(善意無過失で)取引した者が、一定の要件のもとで、その動産の所有権を取得することを認めている。これを「即時取得」という(民法192条)。(以後も条項は民法を示す。)これは、物権の存在を推測させる公示を信頼した者は、その公示が実質的権利を伴わない場合にも、その信頼が保護され、公示どおりの権利を取得することができる考え方であり、「公信の原則」という。
2. 公信の原則における不動産と動産の位置づけ
前述した即時取得は動産にしか認められていない(192条)。動産取引では、社会において頻繁に行われていることから、即時取得の成立により権利を失う本来の権利者の静的安全を犠牲にしてでも、取引の安全を図ることがとくに...