中央大学法学部通信教育課程 2022年度刑法各論レポート第1課題
課題1
Xは四畳半程度の部屋の中で、同じ部屋にいたAを脅かせるために、日本刀の抜き身をAの至近距離で数回振り回した。
Xの暴行罪(刑法208条)は成立するか。論じなさい。
1 暴行罪について
「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかった行為」(刑法208条)を暴行罪といい、暴行によって人が負傷した場合には、結果的加重犯として、傷害罪が成立し、人を負傷させようとして暴行したが、負傷しなかった場合には、傷害未遂という形態ではあるが、結局は暴行罪が成立する。このように暴行罪は傷害未遂形態の一部を捕捉する犯罪でもある。
暴行罪における暴行とは、人の身体に対する物理力(有形力)の行使であり、典型的なものとして、殴る、蹴る、突く等である。通説・判例上は、必ずしも傷害の結果を惹起すべきものであることを要しないことや人の身体に向けられたものであれば足りるとされており、傷害の危険性(傷害結果発生の一定程度以上の危険性を要求するか)と身体への接触の要否について検討していく。
2 傷害の危険性について
「傷害するに至らなかった行為」については、傷害の危険性の有無を検討する必要がある。判例でみると例...