※このまま提出せず、参考資料としてお使いください。
課題
テキスト巻末にある図版リストから時代や地域の異なる2つの作品を選び、2作品の造形的な特徴をそれぞれ説明・比較分析した上で、その違いが生じた原因や背景について1200字程度で論じてください。
なお、2つの作品は必ず異なる章から1つずつ選んでください。造形的な特徴の相違や変遷を分析することによって、ヨーロッパ美術(特定の期間や地域でもかまいません)の特徴が明らかになるような作品を選択してください。レポート試験の冒頭にはタイトルを付けて、その後に2作品の名称と記載されている章の番号も明示してください。
●解答●
キリスト教美術におけるキリストの描写方法の変遷
第 5 章:5 - 3《善き羊飼い》、第 13 章:13 - 8《円形大ピエタ》
古代ローマ末期に、キリスト教がユダヤ教から分派して誕生したことにより、初期中世が始まる 5 世紀末にいたるまでのキリスト教初期段階の美術は、総称して「初期キリスト教美術」と呼ばれている。《善き羊飼い》は、この時代にローマのプリシッラにある、「カタコンベ」と呼ばれる地下墓地に描かれた壁画である。大きく描かれた円の中には、肩に羊を乗せた羊飼いの男性が1 人、傍らには 2 頭の羊と孔雀、ヤマウズラなどの鳥が描かれており、その円の周囲には、<ヨナ>、<ダニエル>、<オランス>、<スザンナと長老>の物語といった、聖書場面が描かれている[註 1]。キリストは『ヨハネによる福音書』の中で、「わたしはよい羊飼いである。よい羊飼いは、羊のために命を捨てる。[註 2]」と残していることから、この羊飼いはイエス・キリストを意味していると伝えられている。313 年のミラノ勅令によってキリスト教がローマ皇帝に公認されるまでの間、「神は一柱しか存在しない」と唱えるキリスト...