東京福祉大学の公的扶助論の科目終了試験のポイント4です。
科目名:公的扶助論 科目コード:2043
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4. 生活保護制度の動向とその背景について
現在、日本では少子高齢化や経済格差の拡大といった社会的な課題が深刻化している。こうした背景の中で、生活保護制度の役割はますます重要になっており、特に、生活保護を受ける人々や世帯の数がどのように推移しているのか、その動向は社会全体の経済状況や福祉政策と密接に関係している。本稿では、そんな被保護人員および被保護世帯の動向とその背景について述べていく。
令和7年1月の厚生労働省の「被保護者調査」によると、被保護実動員数は約200万人で、対前年同月と比べると約1.6万人の減少(0.8%)の減少である。さらに令和4年の厚生労働省の「生活保護の現状について」では、被保護人員の内半数つまり100万人ほどが65歳以上の高齢者となっている。これは物価が高く、年金や貯金を切り崩して生活しているが、働こうと思っても非正規雇用が多く、賃金が低いことが原因の一つである。少子高齢化により、女性や高齢者が雇用されやすくなったものの、非正規雇用の場合が多くそれが賃金の上昇を抑えているという負のスパイラルが発生している。
生活保護を受ける世帯の構成にも大きな変化が見られる。それが単身高齢者世帯の増加である。令和7年の調査では、高齢者世帯が約90万で、その内の単身世帯が約84万と9割を超えている。日本では高齢化が進む中で、身寄りのない高齢者や家族からの支援が受けられない人々が増加しており、こうした人々にとって生活保護は命綱ともいえる制度となっている。
こうした生活保護制度の成り立ちは、日本の社会福祉の変遷と密接に関係している。戦後間もない時代には、生活困窮者の最低限度の生活を保障するために生活保護法の前身である救護法が制定され、その後現在の生活保護法が施行された。好景気であった高度経済成長期には被保護者は比較的減少傾向にあったものの、バブル崩壊後は非正規雇用の拡大や雇用の不安定化が進み、生活保護制度の利用者が増加することとなった。そして近年も2020年の新型コロナ流行以降、倒産や廃業、失業などで職を失う人が増加したり、原材料の上昇や円安の影響で物価が高騰し、家計を逼迫するなど貧困は拡大するばかりである。
ここまで、生活保護制度の動向とその背景について述べてきた。近年は被保護人員は減少しているものの、まだ200万人も生活保護制度を利用しているのが現状であり、生活保護制度を利用したいけどできない人や周りの目を気にして利用しない人もいる。そのため、生活保護制度は社会的な再出発を図るための重要な制度であることを広め、より個別のニーズに対応できる支援体制を整備することが求められる。
厚生労働省「被保護者調査」2025年
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/74-16.html