平成二十一年度後期レポート
源氏物語における和歌の役割
―第一部に見る女主人公としての紫の上―
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講義のなかで紫の上の生涯をみていくなかで、次第に紫の上が『源氏物語』において女主人公として描かれているように思われた。紫の上の心情を探るにあたっては物語の構成、語りの文、和歌の解釈を詳細に検討していく必要がある。殊に紫の上が詠んだとされる和歌の解釈はその真髄を理解するに重要な役割を果たしているものと考えられる。本小論では主として、紫の上の登場する場面での歌の役割と紫の上の真情について探っていきたい。
研究にあたっては、紫の上が登場する場面の歌をなるべく時代系列順にあげ、前後の事件と兼ね合わせて考察していく。歌の解釈についてはいくつかをあげ、各々比較検討していくつもりである。
これまでの紫の上についての研究では、鷲山茂雄氏が「『源氏物語』の“紫”の秘密」のなかで、「『源氏物語』の“紫”という言葉がもつ秘密に無関心になってしまって、この物語の根底にある肝心の“罪”に対して鈍感になって」いると指摘してい。すなわち光源氏の栄華と罪という背反する理念が一...