萱野稔人、水野和夫 両氏による『超マクロ展望 世界経済の真実』の書評
書評
『超マクロ展望 世界経済の真実』
本書は、2009年初頭から2010年夏にかけて十数回行われた、水野和夫・萱野稔人両氏の対談の成果をまとめたものである。
第1章では、先ず資源価格の高騰は先進国の交易条件を悪くさせた事、そして交易条件は先進国と資源所有国である途上国との力関係が関係していることが述べられている。石油を例に挙げ、石油を金融商品化することにより、領土主権から離れ、市場メカニズムに組み込まれた事を述べている。その影響により、軍事の姿の変化も指摘している。イラク戦争では、イラクを支配することが目的ではなく、アメリカが自国経済を守るための戦争であり、当時の大統領フセインは石油売上代金をドルではなくユーロで受け取るとした決定をし、それを覆す目的であったとしている。経済システムの防衛のためには、直接利害関係にない土地であっても、軍事介入がなされるというのが脱領土的な軍事の姿だと論じている。
第2章では、世界資本主義のヘゲモ二―(覇権)の移遷について述べられている。筆者等によると、ヘゲモニーが移転すると、その都度に生産拡大(バブル)し、それが立ち行かなくなると金融拡大す...