精神科リハビリテーション学

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    精神科リハビリテーション学
    「精神障害者の職業リハビリテーションの概要を整理し、今後の課題について述べなさい」

    資料の原本内容

    精神科リハビリテーション学
    「精神障害者の職業リハビリテーションの概要を整理し、今後の課題について述べなさい」
     障害者社会復帰を目的とした援助活動を総称してリハビリテーションと呼ぶ。ILOによる職業リハビリテーションの基本原則(1983年)によると、職業リハビリテーションは「障害者が適当な雇用につき、それを継続し、かつ、それにおいて向上することができるようにすること、ならびに、それにより障害者の社会への統合または再統合を促進すること」と定義されている。
     労働による生産活動に携わることで社会との接点を持つことができ、社会参加につながる。このことにより、生活の充実感がもたらされる。また、収入を得ることができ、本人と家族の生活を支えることができるようになる。
     職業リハビリテーションの過程には6つあり、説明を加えると以下のとおりである。
    ①職業評価 障害者職業センターや各種就労支援機関により、障害者の職業能力について、実態把握する課程である。
    ②職業指導 カウンセリングをとおして、自己理解と職業理解を促し、就労について望ましい自己決定を支援する。
    ③職業準備訓練と職業訓練 就業に必要な適応訓練、職業訓練を提供する。
    ④職業紹介 適職を見つけるための援助である。障害者には能力に応じた求人を、事業所には求職者を紹介するというマッチングを行う。
    ⑤保護雇用 一般雇用が困難な障害者に対して、特別な配慮のもとでの仕事を提供する。日本では、障害者雇用の割合が厚生労働省により定められている。
    ⑥フォローアップ 職場適応が達成されるまでの間、行政機関による指導が行われる。
     日本は1992年に、「職業リハビリテーション及び雇用(障害者)に関する条約」に批准した。この条約では、障害者の雇用、地域社会への統合にあたり、障害者に対する機会および待遇の均等の確保を実現するために、職業リハビリテーションに関する適当な措置をすべての種類の障害者が利用でき、開かれた労働市場における障害者の雇用機会の増大を図るよう求めている。
     次に、精神障害者のリハビリテーションについて触れる。それは医学的なリハビリテーションが中心である。障害の改善が目標とされる。実際的には、治療後にリハビリテーションを行うというわけではなく、治療・リハビリテーション・生活が、渾然一体となっている。つまり、治療を受けつつリハビリテーションを行い、生活を営んでいく。この際、ナイトホスピタル、デイケア、社会復帰施設などが活用されてきた。
     精神障害者のリハビリテーションをめぐる特徴としては、以下のようなものがある。
    ①受診・服薬の継続が必要である。この不便さについて、雇用者側の理解が必要である。②社会的偏見の対象である。精神疾患に関する適切な知識がまだあまり社会に広がっていない。そのため、職場の人間は、精神障害者の不便さが想像しにくく、彼らの能力についても把握しづらい。当事者自身が社会的偏見を取り込んでしまい、できることもできないと思ってしまうことがある。
    ③多くが中途障害である。したがって、当事者にとって、障害の受容の過程が必要となる。
     ところで、私は京都府の精神知的障害者を対象とした職業訓練施設でアルバイトをした経験がある。そこでは、職業リハビリテーションの一連の流れが行われていた。
     業務の中で、職業リハビリテーションには困難が多くあることを感じた。とくに、個人に応じた職業訓練があまり行われていないことに問題を感じた。障害者の能力・疾患は多様であるにもかかわらず、訓練内容の幅はあまり広くなく、作業や動作のレベルでの能力確認・指導が中心であった。しかし、彼らに最も欠けているのはコミュニケーションの能力であると思う。雇用者側としては、仕事の遂行能力のみならず、他の従業員とのコミュニケーションがどの程度できるかを重視する。仕事以前の問題として、挨拶ができるか、受け答えができるかということである。施設では、こういったコミュニケーション面での能力評価があまりなされておらず、指導は不十分である。
     職業訓練施設においてこの視点が欠けている原因としては、職業を開拓しフォローする担当者(ジョブコーチ)と、職業訓練の部門の担当者との連携が十分になされていないことにあると感じられた。

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