精神保健福祉援助演習1
「エクササイズ1について、あなたなりに精神保健福祉士としてどのように対応するか、考察してまとめてください。」
精神保健福祉援助演習1
「エクササイズ1について、あなたなりに精神保健福祉士としてどのように対応するか、考察してまとめてください。」
1)問いかけにはほとんど答えず、黙っていることが多い面接場面で、どう対応するか。
2)分かりませんとしか答えない人にどう接するか
3)面接では話があちこちに飛んで余計に混乱する。どう軌道修正すればよいか。面接技法という観点から考えなさい。
精神保健福祉士としての仕事の第一歩は、利用者を理解することである。理解のためには、その人その人が様々なパーソナリティや行動様式を持っていることを分かっていなければならない。精神疾患を有している場合、その疾患に起因する思考パターンや行動の傾向があったとしても、それはその人の一面であり、患者の範疇で人くくりにして理解することは適切ではない。また、疾患を有していることによって問題を多く抱えていたとしても、「できること・得意なこと」といった健全な部分や長所に着目するというストレングス視点を持つことは有効である。
テキストのエクササイズ①~③は、利用者が置かれた環境においてギャップがある状況と言える。精神保健福祉士としては、彼らと環境の橋渡しとなることが仕事である。精神保健福祉士が行なうソーシャルワークは、彼らが環境と相互に影響しあう接点となる部分に介入して、目指すべきポジションと現在置かれたポジションとのギャップを解消する作業と言える。この第一歩は、利用者の理解である。これにより、ギャップがどこにあるのかという理解につながる。次の段階として、利用者のニーズをつかむことを目指すこととなるであろう。
さて、エクササイズ①においては、利用者は問いかけにはほとんど答えないため、本人を理解することが困難である。矢継ぎ早にことばを投げかけるのではなく、ゆっくり面接を進めていくことが大切である。相槌や促しによる反応をして、耳を傾けることで、利用者は心を少しずつ開いていく可能性がある。それから、会話のみならず、非言語的コミュニケーションにも注意をはらうべきである。例えば、利用者は目線を合わせるか、身体をどちらに向けているか、表情はどのようなものか、手足の動きはどうか、といった動作に関するものがある。また、整容、髪型、服装、アクセサリー、荷物なども、本人を理解するための材料となる。
エクササイズ②においても、基本的には①と同様の姿勢で進めていくのがよいと思う。相手を理解しようとする姿勢が大切であり、その気持ちを伝えていかなければならない。先に挙げたような精神保健福祉士の役割について話して、本人を援助できることを説明する。また、本人が置かれた環境として、社会資源(病院・施設・機関など)や制度(生活保護・支援制度など)について紹介して、それにつなげるための橋渡しとなる役割であることを話していく。これらについて本人に理解してもらうことができれば、ギャップは何であるかを考えていくことが可能となり、本人のニーズをとらえることにつながるであろう。いずれは、分かりませんとしか答えない状況を脱却して、徐々に話し出すのではないだろうか。
エクササイズ③においては、よく話すという点で①②とは対照的であり、対応の余地は多くあるだろう。こちらにおいても、同様に傾聴が有効である。その技法としては、相手が言ったことばを繰り返す、相手の話を言い換えて分かりやすくする、相手が表現した感情を繰り返すことで感情を相手に反射する、相手の話したことを要約する、といったものがある。利用者は、一方的に話し続けると、ますます混乱していき、話す内容がよく分からなくなってしまうというのが、今回の例である。精神保健福祉士が傾聴することで、利用者は話しつつ考えをまとめていくことが可能となる。そのなかで、話の軌道修正をしていくこととなるであろう。
エクササイズ①~③における利用者の反応には、精神疾患を有していることに起因しているという要素がある。精神保健福祉士としては、精神疾患についての知識と経験を持ち、彼らに対するコミュニケーションのパターンをつかみ、より的確な対応にしなければならない。ただし、先の述べたとおり、その人その人が様々な人格・社会関係・人生をもっているということがベースにあることを念頭におき、理解に努めなければならないと思う。
ところで、私は野宿生活者巡回相談員として、ホームレスの自立支援の仕事に就いている。①~③のような反応をするホームレスはよくいる。精神疾患を有していない場合でも、信頼関係が構築できていなければ、このような拒否的な反応をされることは常である。このエクササイズの事例は、とても深いテーマであると思う。