私はこの作品の主題はエゴイズム(自分の利益だけ重んじる考え。自分本位の考え方。利己主義)の恐ろしさだと考えました。なぜなら、この作品ではあらゆるところでエゴイズムが取り上げられていたからです。
たとえば、「下 先生と遺書」では先生の叔父が先生の財産を奪ったといことが打ち明けられています。先生の両親は伝染病のためにほとんど同時に死亡し、それで叔父に財産の管理を任せ、先生は東京の高等学校に入学しました。ところがその間に父親の遺産のかなりの部分が叔父に横領されてしまったのです。それに先生が気づいたのは3度目に帰国したときのことです。それから先生は財産を取り戻そうと努力しましたが、結局わずかしか戻ってきませんでした。この事件によって先生は他人を信用しなくなったのですが、この叔父の行動はエゴイズムによるものである、と私は思うのです。この事件について先生は「父にあれほど信用されたり、褒められたりしていた叔父がどうして財産横領という挙に出たのか。」と疑問に思っています。そこには、事業の失敗とか、色恋沙汰があったかもしれないが、先生の父に信頼され、先生を託された叔父も「金」に眼が暗んで、思わず先生を騙すことになってしまったが、その叔父もまた、内心恥じるところがなかったとはいえないだろう、と思いま
「エゴイズムの恐ろしさ」
私はこの作品の主題はエゴイズム(自分の利益だけ重んじる考え。自分本位の考え方。利己主義)の恐ろしさだと考えました。なぜなら、この作品ではあらゆるところでエゴイズムが取り上げられていたからです。
たとえば、「下 先生と遺書」では先生の叔父が先生の財産を奪ったといことが打ち明けられています。先生の両親は伝染病のためにほとんど同時に死亡し、それで叔父に財産の管理を任せ、先生は東京の高等学校に入学しました。ところがその間に父親の遺産のかなりの部分が叔父に横領されてしまったのです。それに先生が気づいたのは3度目に帰国したときのことです。それから先生は財産を取り戻そうと努力しましたが、結局わずかしか戻ってきませんでした。この事件によって先生は他人を信用しなくなったのですが、この叔父の行動はエゴイズムによるものである、と私は思うのです。この事件について先生は「父にあれほど信用されたり、褒められたりしていた叔父がどうして財産横領という挙に出たのか。」と疑問に思っています。そこには、事業の失敗とか、色恋沙汰があったかもしれないが、先生の父に信頼され、先生を託された叔父も「金」...