所有と占有
刑法における所有と占有から考える
刑法において「所有」や「占有」は財産罪によって保護される。しかし、財産罪の中で所有を保護法益とするのは建造物損壊罪や器物損壊罪といった毀棄罪であり、占有権を保護法益とする窃盗罪や横領罪などの領得罪の方が刑罰が重くなっている。たとえば建造物損壊罪が5年以下の懲役であるのに対し、不動産侵奪罪は10年以下であり、器物損壊罪は3年以下の懲役又は30万円以下の罰金であるのに対し、窃盗罪は10年以下の懲役で横領罪は5年以下の懲役といった具合である。これは、占有という概念の中に所有権も含まれ、また他人の物を占有するという状態は誘惑的であって他人の支配権を排除して代わりに自己の支配権を確立する点に悪質性を見るからである。
とはいっても、奪取罪の保護法益については本権説と占有説という論争がかつてあった。本権説は事実上の占有の基礎となっている所有権や賃借権、質権が保護されるとするものであるが、本権とした場合は保護範囲が狭い上に、民法上で本権の判断がなされなければ結着がつかず、また本権であるかどうかは外観からわからないという批判がある。よって判例は占有説をと...