第Ⅰセメスター基礎教養3:評定A

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    資料の原本内容

    セカンドメッセンジャーとしての活性酸素種
    活性酸素種(ROS)は細胞内シグナル伝達にかかわるセカンドメッセンジャーと言えるか。セカンドメッセンジャーとしての地位が確立しているカルシウムイオンや環状AMPなどと比較して、肯定的・否定的な両面から論ぜよ。
     細胞外からの情報伝達物質が細胞膜の受容体に情報を運んできた際に、新たに作られた情報伝達物質はセカンドメッセンジャーと呼ばれるが、環状AMPやカルシウムイオンなどのセカンドメッセンジャーは、受容体と情報伝達物質の結合を認識し、様々な酵素を活性化することにより、最終的な細胞応答に導くカスケード的な反応を起こす。定義や環状AMP・カルシウムイオンなどの反応を考えると、活性酸素種がセカンドメッセンジャーであるかどうかを論じる際に、①PDGF刺激【刺激】によって本当に過酸化水素【活性酸素種】ができるのか。②過酸化水素【活性酸素種】の刺激だけでその後の一連の反応は進行するか。③過酸化水素【活性酸素種】の産生を阻害すればPDGF【刺激】の効果を遮断できるか。という三点が重要になる。
     まず、活性酸素種がセカンドメッセンジャーであることを肯定する根拠としては、第一に①を肯定する実験結果が得られている。第二に、②については実験により活性酸素種が少ないと細胞増殖速度が下がるということが分かっている。そして、③については、NAC【抗酸化剤】による情報伝達阻害の実験で、NACがPDGFによる過酸化水素産生を抑制するという結果が得られている。また、活性酸素種はカルシウムイオンでいうカルモジュリンのような情報伝達における標的蛋白質(チロシンファスファターゼ等)が存在すると言われている。すなわち、すでにセカンドメッセンジャーとして知られている物質との共通点があると言える。
    一方否定する根拠としては、第一に、カルシウムイオンや環状AMPと活性酸素種を比較するとカルシウムイオンでは刺激応答性にチャネルを開いて放出されるのに対して、活性酸素種は刺激応答性ではあるが、もともと存在するのではなく合成されて作用する。前者はシグナルが恒常的に活性化し続けるのを防ぐ機構が分かっているが、後者は具体的な機構が示されていない。第二には上で肯定する根拠として挙げた実験結果であるが、②で挙げたものも③で挙げたものも、②や③を完全に証明する根拠としては不十分であるように思われる。というのは②の実験結果では確かに活性酸素種が少ないと細胞増殖速度は下がっているけれども、活性酸素種がないと全く細胞増殖ができないかどうかはこの実験のみからは不明であり、断言できない。③についても同じことが言える。
    月曜4限 現代生命科学の基礎
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