基礎実習レポート生物系(核酸)

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    資料の原本内容

    生物系基礎実習レポート
    Ⅰ-3 核酸の分析
    実験実施日

    2010/07/09 Fri, 2010/07/14 Wed, 2010/07/15 Thu
    提出日

    2010/08/20 Fri
    Ⅰ-3.1 電気泳動法による核酸の解析
    Ⅰ.目的

      核酸研究の基本操作を習得する.臓器からのDNAの抽出を行い,吸光度による定量的解析,電気泳動による定性的解析を行う.また,得られた染色体DNAの制限酵素処理による影響を観察する.
    Ⅱ.操作

    重要な操作については()内に青字でその意義を示した.

    約50mgの肝組織をエッペンに取り,500μLのExtraction Bufferを加えた.(界面活性剤で生体膜成分である脂質を分解した)さらに40μLの20mg/mL Proteinase K を加えた.(細胞由来のRNA分解酵素など,サンプル中のタンパク質を分解した)十分にボルテックス(機械による振動で混液)した.Proteinase K の至適温度である55℃で20分間湯浴した.この際5分おきにボルテックスで混液した.次に,200μLの5M NaClを加えて2秒ボルテックスし,55℃で5分間水浴で反応させた.(タンパク質を塩析させる)5分間氷冷しSDSを含む沈殿を析出させた.12500rpm,4℃,1分間遠心分離した.別のチューブに上清をとり700μLのイソプロパノールを加え,室温で5分間転倒混和してよく混ぜた.(アルコール沈殿により核酸と糖を溶液から濃縮・分離させた)白くもやもやとしたものが徐々に発生し,沈殿となった.5000rpm,4℃,1分間遠心分離し,上清を完全に取り除いた後,420μLのTE(EDTA含有緩衝液)を加え沈殿を溶解させたのち,スピンダウンした.(卓上遠心分離機にかけた)20μLのサンプルをRNaseA未処理サンプルとして0.5μLのチューブに取り,残り400μLのサンプルに5μLの10mg/mL RNaseAを加えて2秒間ボルテックスし,55℃で15分間湯浴した.(サンプル中のRNAを分解した)次に5μLの20mg/mL Proteinase Kを加えて秒間ボルテックスし,55℃で15分間湯浴した.(RNaseAを分解した)これに40μLの酢酸ナトリウムを加えて2秒間ボルテックスし(サンプル中のDNAの負電荷を相殺し,アルコール沈殿の効率を上げた),440μLのイソプロパノールを加え(水溶性であるがアルコールには難溶性であるDNAおよび多糖類を沈殿させた),室温で5分間転倒混和してよく混ぜた.析出した白いもやもやとしたものを5000rpm,4℃,1分間遠心分離にかけたのち上清を取り除き,得られた沈殿に1mLのWash Solutionを加えて12500rpm,4℃,1分間遠心分離した後情勢を取り除く作業を2回行った.(DNAがWash Solutionに難溶性であるのを利用して,可溶性の多糖類を取り除いた)1mLの70%エタノール溶液を加え,12500rpm,4℃,1分間遠心分離して上清を取り除き,室温で風乾した.(DNAが70%エタノール溶液に難溶性であるのを利用して可溶性のNaClを取り除いた)これに200μLのTEを加えDNAを一晩放置して溶解させ,翌日ピペッティングによって溶液を均一にした.

    石英セルに3mLのTEを加え,260nmおよび280nmで吸光度測定を行った.まず260nmでゼロ補正を行い,その時の280nmにおける吸光度を記録した,サンプルを20μL加えてパラフィルムを使ってよく混合した後,260nmおよび280nmでそれぞれ吸光度を測定した.サンプルを石英セルに追加して測定を3回繰り返して行った.希釈倍率を考慮して得られたDNA溶液の濃度,総DNA量,純度を求めた.結果は表Ⅰ-3.1.1に示した.

    次に,DNA溶液を精製水で5倍希釈して濃度が0.1723μg/μLになるように調製した.この溶液2.90μLがDNA0.5μg相当量である.DNA溶液5.80μLとddH2O14.20μLを混合したものを制限酵素未処理サンプルとして調製した.次にDNA溶液2.90μL,5×Buffer2.0μL,EcoRI2.0μL,およびddH2O3.10μLを混合したものをEcoRI処理サンプル,DNA溶液2.90μL,5×Buffer2.0μL,PstⅠ2.0μL,およびddH2O3.10μLを混合したものをPstⅠ処理サンプルとして調製した.

    指示に従って前日作成したエチジウムブロマイド入りアガロースゲルを泳動槽に装着した.6×色素液を入れてよく混ぜ,スピンダウンしておいたサンプルおよびλ-DNA/HindⅢサイズマーカーをゲルのウェルに注入した.注入はテキストに従い左から順に,λ-DNA/HindⅢサイズマーカー(0.5μg/12μL)→RNase未処理サンプル→制限酵素未処理サンプル→EcoRI処理サンプル→RNase未処理サンプル→制限酵素未処理サンプル→PstⅠ処理サンプル→λ-DNA/HindⅢサイズマーカー(0.1μg/12μL)となるように行った.これをOrangeGの橙色色素がゲルの末端まで移動するまで約40分間一定電圧で泳動した.これをトランスイルミネーターで紫外線照射して写真撮影したものを結果として図Ⅰ-3.1.1に示す.
    Ⅲ.結果と考察
      表Ⅰ-3.1.1 吸光度測定の結果と作成したDNA溶液の濃度,総DNA量,純度
    ただし,総DNA量および純度を求める際には以下の式を用いた.
    また,上の式のようにしてDNAの純度を求めたのは,DNAの吸収派長の極大が260nm~280nmになだらかに存在するため,ある波長での吸光度から純度を判断することが不可能であるからである.しかし280nm付近に吸収ピークを持つRNAやタンパク質など不純物の存在で260nmでの吸光度に対する280nmでの吸光度の値は影響される.よって280nmと260nmの吸光度を測定して比をとることで,純度を評価できる.作成したDNA溶液の純度の平均値は1.804であり,高純度のDNA溶液が作成できたと言える.一般に高純度なDNA溶液は純度が1.75~1.80であることを考慮すると,作成したDNA溶液には不純物としてRNAが混入していたと考えられる.

     濃度にばらつきが出た原因として考えられるのは,サンプルをセルに注入する時,溶液が不均一であったことである.20μLという非常に少量を扱う場合には少量の誤差でも濃度に大きく影響してしまい,結果として吸光度の誤差につながってしまったと考えられる.また,ピペットマンで20μLとる場合に量が少なかったことも原因の一つである.DNAの濃度は,誤差を考えずに20μL入れたものとして計算したため,結果の値にばらつきが出たと考えられる.純度,DNA濃度に関して,以降の実験では3つの値の平均値を結果として用いることにした.
    図Ⅰ-3.1.1 電気泳動したゲルを紫外線照射した結果
     染色体DNAのサイズはλ-DNA/HindⅢサイズマーカーの相対泳動距離とテキストに記載されているマーカーのサイズの対数値を検量線として描くことにより求めることができる.ただし,λ-DNA/HindⅢサイズマーカーと制限酵素未処理サンプルの結果を見比べると,制限酵素未処理サンプルにおいて一番明るく太いバンドがサイズマーカーの一番泳動距離が短いバンドと同じ距離に位置していることから,染色体DNAサイズはおよそ23120bpであることが明らかである.検量線は5ページにグラフⅠ-3.1.1として付した.
     サイズマーカーと染色体DNAの染色度合い(バンドの明るさ)を比較して,以下の式によりDNA濃度を推定した.制限酵素未処理サンプルのバンドの明るさは,サイズマーカーの上から二本目のバンド(9416bp)の明るさの2.5倍であると目算した.
    なお,本来ならば最もバンドの太さが近いサイズマーカーの23130bpのバンドと制限酵素未処理サンプルの一番上のバンドを比較することで濃度を推定すべきであると考えられるが,サイズマーカーのバンドは太く,飽和している状態で判断が困難だったので,サイズマーカーの上から二本目のバンド(サイズは9416bp)を用いるのが妥当であると判断した.核酸染色に用いたエチジウムブロマイドの量は,ほぼ核酸の分子サイズに比例して増加すると考えられる.これはエチジウムブロマイドがインターカレーターとして特異的に二本鎖DNAの鎖間に入り込むためである.このような性質により上で述べたように,二本目のバンドと比較して濃度を算出しても一番上のバンドを用いて得られる結果と大きな誤差は出ないと考えた. 吸光度から求めた濃度が861.7μg/mLであるのに対して,染色度合いから求めた濃度は418.4μg/mLと大きく異なる値となった.バンドの明るさの強度を目算する場合では,主観的に判断してしまうことに加えて,写真からは光の強さがほぼ同一に見えてしまうため正確に判断できないので,より実際の値に近いのは吸光度から求めた結果であると推察する.上で述べたように吸光度から求めた結果にもばらつきがあるが,ランベルトベールの法則に従って計算するため,染色度合いから求める場合に比べて科学的な根拠が明確である.

    染色体DNAをEcoRIおよびPstⅠで処理したサンプルを泳動した結果を見ると,マーカーのサイズ23130bpのバンドより下方に薄く広がった染色が見られる.これは制限酵素によってサンプル中の染色体DNAが配列特異的に切断された細胞由来の反復配列...

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