直流回路
【実験概要】
○目的
測定を通じて直流回路の理論(オームの法則、合成抵抗、キルヒホッフの法則など)、を実際に検証する。実験は市販の凡用測定器を用いた単一の抵抗測定、直流抵抗回路やホイーストンブリッジ回路を用いた抵抗値や電圧値の測定、および非線形抵抗の代表例である小型の白熱電球(豆電球)の電圧・電流特性の測定からなる。以下では簡単のために直流電圧、直流電流を単に電圧、電流という。
○背景
交流と直流
電気と一口に言っても、私たちの身近にある電気といえば、壁のコンセント(100、または200V)と乾電池である。同じ電気でも、この二つは根本的に違う。電圧の違いではありません。壁のコンセントは交流であり、電池は直流である。電気の種類を大きく分ければこの2種類になる。直流とは乾電池、自動車のバッテリーのように電圧は常に一定である。乾電池は1.5V、自動車のバッテリーは普通は12Vである。もっとも使っているうちに電圧は次第に低くなっていく。
図1:電圧の変動
これに対して交流は図1のように時間に対して一定の周期で電圧が変動する。
家庭用交流電源の場合、静岡県浜松市より西では60Hz、東では50Hzである。
これは明治時代、日本に電気を普及しようとしたとき、東京ではドイツ製の50Hz、大阪ではアメリカ製の60Hzの発電機を買ったことが原因のようである。その後統一せずにずるずると今日に至った。
《注意》
Hz(ヘルツ)と言うのは周波数の単位で、1秒間の変動数を指す。左の図でこの変化が1秒間でおこったなら、この周波数は1Hzである。
多くの電気機器(テレビ、パソコン、電話…)の内部回路は交流のままでは使えず、交流を直流に変換しなくてはならない。それだけではなく、電圧も必要に応じて変換する。
例えばパソコンのCPUは直流数Vで動作するので、交流100Vを直流、しかも数Vに変換します。なぜ家庭用電気が交流なのか、わざわざ交流を直流に変換するのか、理由はここにある。
交流はトランスと言う部品を使えば簡単に、何種類もの電圧を作ることができる。
図2:電気信号
先ほど交流は時間に対して一定の周期で電圧が変動する、と書きましたが、例えば音声信号のように実に複雑に変動する波形もある。音楽では楽器の種類だけ周波数が違いますし、音の大きさ(電圧の大きさ)、音色(波の形)も違う。
音声も楽器音もマイクを使えば図2のように電気信号に変換される。電気工学ではこのような波形も交流と呼んでいる。
○内容
1、デジタルマルチメータとホイーストンブリッジでの抵抗の測定と比較
2、直列回路の抵抗の測定
3、小型豆電球に直流電流を接続し、両端の電圧Vを0.5Vづつ、0~6Vまで変化させて電流Iを測定する。
○結論
1、ホイーストンブリッジ回路の方が正確に抵抗値を図れる。
2、2つの電流は、ほぼ同じ値をとる。
3、電圧と電流のグラフは放物線を描く
【原理】
・オームの法則(図3)
電流I、電圧V、抵抗R
V=IR
抵抗器の両端に電圧をかけると抵抗器には電流が流れます。同じ電圧なら、抵抗器の抵抗の値が大きいほど流れる電流は小さくなります。大きな抵抗の抵抗器にたくさんの電流を流したいときは、かける電圧を大きくします。かける電圧・抵抗の値・流れる電流の大きさの関係を表したのがオームの法則です。
3:回路
・合成抵抗(直列)(図4)
流れる電流は一定。
V1=R1I
V2=R2I
V=V1+V2=I(R1+R2)=I
図4:直列回路
・ホイーストンブリッジ回路
測定器の内部抵抗の影響を避ける電気抵抗の測定法として、ホイーストンブリッジによる方法がある。図5に既知抵抗P,Q、可変抵抗Rs、未知抵抗Rxから構成されるホイーストンブリッジ回路を示す。
図5:ホイーストンブリッジ回路
・抵抗
抵抗とは、電気の流れにくさをあらわしたもの、つまり電気の流れを妨げるものである。これを水の世界で考えるならば、水道管につまった「ゴミ」。電気の通る道を電路というが、これは水の世界では水路という。水路へある圧力で水を流そうとすれば、水道管へゴミがなければ一番水はよく流れ、ゴミがつまってる程流れにくくなる。電気もまったく同じで、電路に抵抗があるほど電流が流れにくくなる、という事になる。
・白熱電球
白熱電球は特別な点灯回路を利用することなく手軽に照明効果を得ることが可能である。近年では、小型かつ発光効率の高いクリプトン電球の需要が高まっている。
フィラメント、ガラス球、口金の三つから成り立っている。ガラス球の中には真空のモノや不活性ガスを封入したものがある。一般にはアルゴンガスが封入されている事が多いのだが、近年ではクリプトンと呼ばれるガスが封入されているクリプトン球が人気を集めている。
【実験内容】
A、抵抗測定
A-1.使用器具
・DIGITAL MULTIMETER DL-712(6060058)
・直流電源装置061993SG01713
・抵抗測定実習装置ST-103A 06-92-01871-0-1
・抵抗(1kΩ、3kΩ、10kΩ)
A-2.内容
各人が異なった抵抗Ri(i=1~n≧3)を1回ずつデジタルマルチメーターで測定し、表示されている値と比較する。次に、ホイーストンブリッジ回路を備えた抵抗測定実習装置を用い、上記の抵抗Riを測定する。
A-3.実験データ(表1)
表1:実験Aのデータ
R1
R2
R3
表示値
1kΩ
3kΩ
10kΩ
測定値(デジタルマルチデータ)
978Ω
2.98kΩ
9.84kΩ
測定値2(ホイーストンブリッジ)
978Ω
3kΩ
9.89kΩ
B、直列回路の抵抗の測定
B-1.使用器具
・DIGITAL MULTIMETER DL-712(6060058)
・直流電源装置061993SG01713
・抵抗測定実習装置ST-103A 06-92-01871-0-1
・抵抗(1kΩ、3kΩ、10kΩ)
B-2.内容
実験回路に2個の異なった抵抗を直列に接続し、各抵抗の電圧を測定し、合成抵抗の理論値と比較する。各人それぞれが2~3ケース抵抗の組み合わせを変えて、それぞれで実験すること。電源の電圧は各抵抗の最大許容電力を超えないように2[V]以下とする。
B-3.実験データ(表2)
表2: 実験Bのデータ
R1=9.89kΩ R2=3.00kΩ R3=0.978kΩ
全電圧V
合成抵抗R
電圧V1
電圧V2
電流I1
電流I2
直列(R1,R2)
2.01V
12.89kΩ
1544mV
467mV
156.12
156.67
直列(R2,R3)
2.01V
3.978kΩ
1516mV
496mV
507.16
505.33
C、小型白熱電球の特性
C-1.使用器具
・DIGITAL MULTIMETER DL-712(6060058)
・直流電源装置061993SG01713
・抵抗測定実習装置ST-103A 06-92-01871-0-1
・抵抗(1kΩ、3kΩ、10kΩ)
C-2.内容
小型白熱電球(豆球、定格電圧6[V]、定格電流0.15[A])に直流電源を接続し、両端の電圧Vを0.5Vづつ、0~6Vまで変化させて電流Iを測定する。電流はmA単位にて有効数字3桁以上で測定する。
このような場合においては、電流と電圧の関係は、次のような実験式によりあらわされることが知られている。
I=A*V^B (A,Bは定数のパラメータ) (1)
上式から電卓他より、VとIの測定値から最少二乗法によるカーブフィット(曲線の当て嵌め)を行い、AとBを求める。さらに、縦軸に電流I、横軸に電圧Vをとり、測定値をプロットするのと同時に式(1)の曲線をプロットして一致の度合いを確認する。これによってこの電球の抵抗、電圧特性、抵抗・電流特性、あるいは電圧・電圧特性などが得られる。
<最小自乗近似法によるパラメタの計算:I=A*V^B,LogI=logA+B*logV>
目的:各電圧値Viに対して求められた電流値Iiのデータから、 I=A*V^Bに最も近いAとBの値を求める。このA,Bの値は自乗誤差が最小となる以下の式を満たす。
logVi,(logVi)^2,logIi 及び logVi×logIiの平均値をそれぞれ とし、(1),(2)を整理するとA,Bが以下のように求められる。
A,Bを仮定したN個のデータを作成し、このデータからA,B値をExcelにて求めた場合を以下に示す
C-3.実験データ(表3,図6,図7)
表3:実験Cのデータ
電圧V
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
4.5
5.0
5.5
6.0
電流I
0.26
35.0
50.3
63.4
75.5
86.0
94.8
103.9
112.3
120.3
128.0
135.6
142.5
図6:実験電流値と理論電流値
図7:実験電流値と理論電流値(方対数表示)
【まとめ】
ホイーストンブリッジの方が正確に抵抗値を測ることができる。直列回路の流れる電流は一定である。
【参考文献】
配布資料
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