グローバリゼーションとは何か?(1)

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    グローバリゼーションとは何か?(1)
    今日、政治、経済、軍事、環境、文化、通信などのあらゆる分野において、「グローバル化」という言葉を耳にしない日は無いと言っても過言ではない。好む、好まざるに関わらず、今世界で起きている様々な事象は「国際化」という一言では語れない、「地球化」(グローバル化)という大きな枠組みで考えざるを得ないほど複雑化している。様々な分野で進んでいくグローバル化は、人、モノ、カネなどの移動を容易にすると共に、様々な分野に大きな影響をもたらしている。それはアメリカの価値観や文化が大きく波及していく中で、世界がアメリカ化していくのではないかという危惧を抱かせる側面も強いと思われる。このレポートでは発展途上国に焦点を絞り、グローバリゼーションとは何かについて考えてみたい。
    発展途上国におけるグローバル化の進展は、「民主政治の広がりに拍車をかけ、近年誕生した民主的な政府が正当性を保つのに一役買っている。同様に、人的資本の開発、制度の構築、環境の改善に向けた資源を出すように、政府や国際制度に圧力をかけている。」(ジョセフ 2004 P215)というように発展途上国の貧困解消に寄与するのか、それとも「最悪のシナリオ通り進んだ場合、グローバル化は経済を混乱させ、重要な社会的安全網を破壊し、環境面の損害を悪化させ、文化的アイデンティティを喪失させ、紛争を増やし、病気や犯罪を広めかねない。」(ジョセフ 2004 P216)というように貧困をさらに悪化させるのかという両極端の可能性をはらんでいる。現時点では、「危惧される状況にある国と国民は、グローバル化の利点をうまく利用する力が限られているばかりか、グローバル化による不都合を避けたり乗り越えたりする力も不足している。」(ジョセフ 2004 P217)という状況であると著者は指摘し、また、なぜ発展途上国がグローバル化の進展においていかれるような状況下にあるのかという理由としては、「振るわない経済実績、はびこる貧困、機能しない制度、技術の格差などに見られる国内の弱点が国際的な脆弱さとなって、途上国が変化に対処する力に制約を加えるからである。」(ジョセフ 2004 P217)と指摘している。経済成長や貧困、統治制度、技術格差などの問題はグローバル化が進展し始める前からその拡大を危惧されていたと思われるが、その中でも特に技術格差・情報格差の問題はグローバル化の進展にあわせ急速に拡大しているのではないだろうか。インターネットの普及により私達はいつ、どこにいても瞬時にあらゆる情報を入手できるようになった。
    世界中のあらゆる紛争や環境問題などに対する情報量が増えると同時に、自然と世界の様々な事象に対する関心も高まった。インターネットの登場はまさにグローバル化の促進と密接に関わってきたと思われる。インターネットの存在が世界をより身近にした印象が強い我々(先進国の国民)に対し、途上国では一部の少数エリートを除き、「国民の多くは相変わらず、電気さえないか、あっても停電しがちな埃っぽい村落や貧しい都市近郊に住んでいる。」(ジョセフ 2004 P230)という現状におかれている。具体的な例を見てみると、「20世紀末、先進国に住む世界で最も豊かな20%の人たちが世界の電話線の74%を使っていたのに対し、最も貧しい20%の人たちは1.5%しか使っていなかった。同時期、急激に増えたインターネット利用者数を見ると、OECD加盟国が91%を占めていた。」(ジョセフ 2004 P231)というように格差は明らかである。さらに研究開発における格差も見てみると、「1990~96年、研究開発に携わっている科学者数は、先進国の平均が人口1000人当たり4.1人であったのに対し、途上国は0.4人であった。世界銀行によると、91年の先進国・途上国間の研究開発費の差は、1人当たりGDPの差より大きかった。」(ジョセフ 2004 P232)というように、先進国とわたりあっていくにはいささか厳しい情報・技術格差を抱えている。
     グローバル化の進展は、貧困に苦しむ途上国にとって、技術開発などを通して先進国に近づいていくことをますます難しい状況に追い込んでいく可能性が高い。先進国の国民は発達したメディアやインターネット環境を通し、グローバル化は何なのであるかということとその恩恵を比較的感じ取りやすい。それに対し途上国の国民は、メディアやインターネットに接する以前の段階におかれているので、グローバル化という概念から得られるものを見出せる状況ではない。やがて途上国が発展をし、一般国民が手軽に情報にアクセスできる環境が広がったときに、グローバル化という概念はそれまでの先進国との格差、先進国の協力や支援の程度を如実に知る大きなきっかけとなるのではないだろうか。そう思うと、グローバル化とは先進国が途上国に対しどのように接していくのかという命題をつきつけているようにも思われる。
    参考文献
    ジョセフ・ナイ、ジョン・ドナヒュー 2004 栄治出版
    『グローバル化で世界はどう変わるのか -ガバナンスへの挑戦と展望』

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