しかしながら、もともと男女別室宿泊の原則は、・・・性的行為に及ぶ可能性を含む種々の理由から異性愛者に関する社会的な慣習として長年遵守されてきたものであり、同性愛者はもともと念頭に置かれていなかったものである。
そして、同性愛者について、この原則を適用するに際して、生物学的な男女にのみ着目するならば、同性愛者においても、これを遵守することは異性愛者と同様にそれほどの困難を伴わずに従うことができるのに、そうではなくて、性的行為が行われる可能性のみに着眼して、実質的にこれを判断しようとすると、青年の家が予定している宿泊形態(数名の者が同一の部屋に宿泊するものであって、一人ずつ個室に分かれて宿泊できるような相当数の個室はない。)では、同性愛者は、青年の家の宿泊利用は全くできなくなってしまうものであり、これは異性愛者に比べて著しく不利益であり、同性愛者である限り、青年の家の宿泊を伴う利用権は全く奪われるに等しいものである。
・・・そこで、男女別室宿泊の原則は、同性愛者について青年の家の宿泊利用権を全く奪ってまでも、なお貫徹されなければならないものであるのか、検討する必要がある。
男女別室宿泊の原則は、青年の家において、性的行為に及ぶ可能性を少なくする男女別室という宿泊形態をとり、利用者にこれを遵守させることによって、性的行為が行われる可能性を一般的には少なくする効果はあるが、実際にそのような行為が行われないかどうかは、最終的には利用者の自覚に期待するしかない性質のものというべきである。
東京高裁平成9.9.16 「府中青年の家事件」判決より
控訴人:教育委員会
被控訴人:団体X
<教育委員会の主張について>
しかしながら、もともと男女別室宿泊の原則は、・・・性的行為に及ぶ可能性を含む種々の理由から異
性愛者に関する社会的な慣習として長年遵守されてきたものであり、同性愛者はもともと念頭に置かれ
ていなかったものである。
そして、同性愛者について、この原則を適用するに際して、生物学的な男女にのみ着目するならば、
同性愛者においても、これを遵守することは異性愛者と同様にそれほどの困難を伴わずに従うことがで
きるのに、そうではなくて、性的行為が行われる可能性のみに着眼して、実質的にこれを判断しようと
すると、青年の家が予定している宿泊形態(数名の者が同一の部屋に宿泊するものであって、一人ずつ
個室に分かれて宿泊できるような相当数の個室はない。)では、同性愛者は、青年の家の宿泊利用は全
くできなくなってしまうものであり、これは異性愛者に比べて著しく不利益であり、同性愛者である限
り、青年の家の宿泊を伴う利用権は全く奪われるに等しいものである。
・・・そこで、男女別室...