日本企業の海外進出は貿易摩擦の回避とより安価な労働コストの追求をきっかけに始まった。現段階ではグローバル戦略として位置づけられるようになり、日本企業の対外直接投資は増大する一方である。こういった状況の中、日本企業のアジアへの事業展開は、EC市場統合、NAFTA結成といった欧米市場の保護主義的地域主義の進展のもとで加速された。とりわけ、中国は近年政治が安定し、経済が高速成長を見せ、市場が徐々に開放され、日本の投資者にとって極めて魅力的になった。そのため、日本企業の中国進出は大きな勢いを見せている。
日本企業の対中直接投資の実施額は、製造業が全体の7割を占め、特に電気機械、一般機械、繊維の割合が大きいであるが、ほとんどの業種が含まれている。異文化社会へのグローバル化には、文化的、社会的、政治的、経済的な摩擦など大きなリスクを伴う。国境を越える日本の企業は、優れた技術力をもって現地社会の福祉増進に貢献するとともに、異文化社会との融和の道を積極的模索していかなければならない。本論文は、中国を事例にして、政策、経済、文化などの要素がいかにして日本企業のグローバル経営戦略の展開に影響を及ぼすかについて考察する。
第一章では、日本企業の海外進出の原因を究明にしつつ、多国籍企業の生成過程を辿って、多国籍企業の成長要因を、技術、経済、および政治の各側面から探り出し、企業経営の国際化戦略の発展段階から、現在に至る日本企業のグローバル戦略の展開を解明する。
第二章では、日本企業の中国進出の全体像を時系列で解明しながら、具体的なデータを用いて日本企業の進出ルートと特徴を考察する。
第三章では、中国の外資導入政策の転換による企業経営環境の変化およびその変化に応じるべく日系企業の戦略的調整を出資比率から考察し、日本的経営のグローバル経営環境の適応可能性についてさらに検討する。
第四章では、日系企業のグローバル化とその経営的特質を分析する。ここでは、日系企業と欧米企業、中国企業の比較から入手して、日系企業のグローバル化の諸側面と戦略展開、それに伴って生じるさまざまな矛盾と問題点などを解明しようとする。
まとめとして、前四章の内容を総括して、これから中国における日本企業のとるべき戦略転換について検討する。
目次
日本企業の海外進出戦略
――中国を中心に――
はじめに
1 日本企業の海外進出
(1)海外進出の段階
①第一段階
②第二段階
③第三段階
(2)進出先(国)と現地化戦略
①アメリカ
②ヨーロッパ
③アセアン諸国
2 時系列に見る中国への進出過程
(1)89年以前――日本の対中直接投資第一次ブーム――
(2)1992年~1995年――対中直接投資の第二次ブーム――
(3)2000年から――拡大に転じた対中直接投資――
3 中国における日系企業の経営環境
(1)中国の外資導入政策
(2)進出する日系企業の出資形態
4 中国における日系企業の経営戦略
(1)外国企業との競争
①日系企業と欧米企業の差異
②日系企業の課題
(2)中国企業との競争と協業
①中国企業の強みと弱み
②日系企業と中国企業の協業
(3)その他の経営戦略問題
①経営管理上の諸問題
②外部環境への対応
(4)中国のWTO加盟によりもたらした機会と挑戦
まとめに
はじめに
日...