精神保健福祉士の中心となる役割として、社会的入院など、長期入院している精神障害者の退院を促すことがあげられる。入院が長期化するに伴い、「退院したい」との思いが薄らいでくる傾向がある。以下に、退院意欲の薄い精神障害者に対する退院支援について、Nさんの事例を交えて述べたいと思う。
Nさんは36歳の女性で、診断名は統合失調症である。これまで精神科病院への入院が2回あり、今回の入院期間は8年になっている。Nさんは×県×市で、工員をしていた父と内職をしていた母の第一子として出生する。4年後に弟が誕生するが、生まれつき重度の障害があった。弟は生まれた時から病院や施設での生活がほとんどであった。父はギャンブル好きで、仕事も休むことが多く、家族はいつも着る物や食べる物に困るほど貧しい生活をしていた。中学を卒業すると同時にZ県の工場に就職し、その寮で生活することになる。18歳の時に、職場の先輩と恋愛関係になるが、結局失恋してしまう。そのことがきっかけとなり、精神的に不安定な状態となる。職場でもさまざまなトラブルを生じさせることになり、結局職場を追われ、両親の元に引き取られることになる。それからも、家族...