1 本問において、訴因変更を許可することができるか。法が「公訴事実の同一性を害しない限度において」訴因変更を認めている(刑訴法312条1項)ことから、公訴事実の同一性の判断基準が問題となる。
2 この点、審判対象は公訴事実であるとする立場から、訴因の背後に一定の事実を想定し、新旧訴因がその同一の事実に含まれるか否かを基準として公訴事実の同一性を考える立場がある(事実的限界設定説)。
しかし、現行法は当事者主義訴訟構造(256条6項、298条1項、312条1項)を採用しており、現行法下での審判対象は、検察官が提出した起訴状に記載された訴因と解すべきである(訴因対象説)。
とすれば、新旧両訴因に示される両事実の基本的部分が同一であれば、公訴事実の同一性があるとすべきである。
そして、公訴事実が同一であるといえるためには、訴因が裁判所に対して審判対象を限定するすると同時に被告人に対して防御の範囲を明示するという機能を有していることから、かかる機能を害しない範囲、すなわち、両訴因間においては、犯罪を構成する基本的事実関係が社会通念上同一と認められる必要があるものと解する(共通性基準)。すなわち、日時・場所・罪質等の基本的事実関係に近接性、密接関連性、共通性が認められれば、
「平成9年12月12日ころ、乙はXから車4台の売却を依頼され、同月18日ころ、うち2台を60万円でYに売却し、その代金を保管中、同月20日、東京都新宿区高田馬場においてXに代金を引き渡す際に、買主Yから内金30万円だけ受け取ったと虚偽の事実を述べて残金30万円を横領した」という訴因を、「平成9年12月20日、東京都新宿区新宿のX方から乙がXより車2台を窃取した」という訴因へ変更してよいか。
1 本問において、訴因変更を許可することができるか。法が「公訴事実の同一性を害しない限度において」訴因変更を認めている(刑訴法312条1項)ことから、公訴事実の同一性の判断基準が問題となる。
2 この点、審判対象は公訴事実であるとする立場から、訴因の背後に一定の事実を想定し、新旧訴因がその同一の事実に含まれるか否かを基準として公訴事実の同一性を考える立場がある(事実的限界設定説)。
しかし、現行法は当事者主義訴訟構造(256条6項、298条1項、312条1項)を採用しており、現行法下での審判対象は、検察官が提出した起訴状に記載された訴因と解すべきである(訴因対象説)。
とすれば、新旧両訴因...