2011年度佛教大学_生徒指導・進路指導の研究(中・高)

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    資料紹介

    資料の原本内容

    中学・高校における生徒指導の原理は何か、また、その際に留意しなければならないことは何か、説明してください。
     生徒指導とは、教科指導と並ぶ重要な教育機能を持つ活動であると言われる。それは、生徒指導が、学校教育の全般にわたって、「すべての生徒のそれぞれの人格のより良き発達を目指すとともに、学校生活が、生徒の一人一人にとっても、また学級や学年、更に学校全体といった様々な集団にとっても、有意義にかつ興味深く、充実したものとなるよう」(「生徒指導の手びき」)指導する営みだからである。生徒指導の定義もそこにある。生徒指導の位置づけには、教科教育とは異なって、ある特定の価値を直接的に追求するものではないという考え方や、それと反対に、生徒指導も直接的に教育目標達成に関与するという考えたがある。しかし、教育は、教科教育の領域や、特別活動の領域など、ひとつひとつの指導領域を明確に区別できるものではない。つまり、生徒指導は、教育の全般に関与する活動であって、教育そのものと言っても大きな誤りではないのである。生徒指導といえば、問題行動や非行の指導や校則を守らせるための指導であるとみなされるが、それはあくまでも生徒指導の一部でしかない。
     また、1965年に発刊された、文部省(現文部科学省)の「生徒指導の手びき」は、それまで様々に解釈されてきた生徒指導の概念を統一し、一定の方向性を示した上で、生徒指導の原理として以下の4点をあげている。それは、「自己指導の助成のための方法原理」、「集団指導の方法原理」、「援助・指導の仕方に関する原理」、「組織・運営の原理」の4つである。
     まず、「自己指導の助成のための方法原理」においては、自発性・自律性・自主性の促進があげられる。欲求や情緒を直接的に行動につなげる自発性、目的に沿って行動を規制し節度あるものにする自律性、人間関係において相互に権利の主張と義務の遂行を可能にする自主性である。
     二つ目に「集団指導の方法原理」においては、学級や友人関係といった集団における相互作用の尊重や、集団の力の利用、人間尊重・友愛と自由の尊重、規律の維持などがあげられる。成員の集団に対する所属感や、成員同士の連帯感を高め、相互に理解し尊敬できる環境を形成することがよい結果を生む。
     三つ目に「援助・指導の仕方に関する原理」においては、特に問題解決能力を育成する援助の重要性があげられる。また、指導にあたっては賞罰を用いる場合は、細心の注意をはらう必要がある。加えて、生徒の人格のより良い発達のためには主観的資料だけでなく、客観的資料の利用が必要である。
     最後に「組織・運営の原理」においては、全教師の参加と専門職分化の必要性があげられる。生徒指導は全生徒を対象とし、学校生活の全領域に関するものであるため、全教師が協力し取り組むべきである。また、それぞれの指導に対し、責任を分化することも指導の成果をあげることにつながる。
     以上の4つの原理を念頭において生徒指導を行うべきである。
     次に、生徒指導を行う際の留意点について述べる。中学校や高等学校での生徒指導を実際に進めるにあたって、重要な視点は生徒理解を深めることである。生徒を理解する上での留意点は大きく以下の4点である。
     一つ目に、生徒は、それぞれが独自の存在であるということを認識しておく必要がある。それぞれの生徒は身体的にも精神的にも異なっており、その生徒を取り巻く家庭環境なども多様である。まずは、そのように個々人で異なる状況を的確に把握することが重要である。方法としては、家庭との連絡を密にすることがあげられる。たとえ些細なことであったとしても保護者と連絡を取り合うことで、より深く生徒を理解することができる。また、学校と家庭が協力することにより、効果的な指導を行うことも可能になる。
     二つ目に、生徒を現在のある一部分だけで把握することは深い理解につながるとはいえない。過去の状態や、未来の展望をも含めた長いスパンで生徒をとらえることが大切である。
     また、ある一部の情報だけで生徒を判断せずに、様々な価値基準から多角的に生徒を理解しようとする努力が必要である。そのためには、教員間の協力体制を整え、多くの場面で生徒の情報を得られるようにしておく必要がある。
     三つ目は、生徒指導の基本には、共感的な態度で生徒と接することがあげられる。生徒を見下ろすような立場からは、生徒を正確に把握し理解することは難しい。生徒との望ましい人間関係を構築した上で、ひとりの人間として接することが深い生徒理解にもつながるといえる。
     最後に、生徒を十分に理解した上で、次は生徒自身がしっかりと自己理解できる状況を作ることが大切である。生徒の自己理解の欠如は、十分な発達を阻害する。そのために生徒自身の発達課題を認識させることと、発展の可能性を最大限に広げるよう援助することが大切になる。自己受容を促し、自己理解を深めさせ、自己実現に向かって努力することができるような指導と援助をする必要がある。
     このような4点に留意して、生徒の理解を深めることが必要である。
     また、生徒の様々な問題行動は、様々なことに興味関心を持ち、行動範囲も広がる中学校から高等学校において顕著になる傾向がある。問題行動は、全てを学校内部で処理しようとはせず、その質によっては、警察や病院といった学校以外の関係諸機関の協力を求める必要がある。以下に万引きの例を挙げる。
     万引きは、言葉は違えど、窃盗と全く変わることはなく、また、万引きは、非行の入り口と言われる初発型非行に分類され、統計では刑法犯少年の罪種別でも多くを占めている。万引きを行う理由には、「皆がやっているからする」「度胸がないと言われるのが嫌だ」「犯罪行為を集団の秘密として共有したい」等の集団心理が働く傾向があるためである。また、万引きを行ってしまった児童生徒は、愛情に飢えていたりするため、人間的な触れ合いを基盤とした集団形成をしていく必要がある。
     万引きが行われた場合の初期対応としては、発生現場、または警察等に早急に教職員が向かい、事実確認をする。児童生徒や保護者からの申し出があれば、その気持ちを大切にしながら正確な事実確認をする。万引きは犯罪行為であるという毅然とした態度で対応する。これらが初期対応のポイントである。その後は再発防止のため、加害生徒に対し、万引きが犯罪であることを十分に理解させ、毅然とした対応で指導することや、加害生徒自身が責任を取らなければならいことをしっかりと認識させ、自分が行ったことを振り返り、反省させることが必要である。その他には、万引きを行ってしまった背景に心の問題等、なんらかの原因が存在する場合もあるため、それも取り去ってやらなければならない。そのためには、スクールカウンセラー等による心のケアも必要である。これらのことを留意して、万引きという問題行動に対応していかなければならない。
     また、万引きだけでなく起こりうる問題行動に関する対応は、マニュアル化し、日頃から生徒の気持ちを考えておく必要がある。
    参考文献
    「これからの教師と学校のための教科外教育の理論と実践Q&A」ミネルヴァ書房、p.10,11,14,15,32,33

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