欧米的な教育観という言葉を用いたが、逆に欧米では子どもの自主性に任せる教育から、知識を叩き込む知育重視型に流れていることが覗われる。日本の学習内容3割削減は表面的に見れば教科学習の軽視につながるかもしれず、実際にアメリカの比較教育学者スティーブンソン氏は「世界を感心させてきた効率的な学科授業をみすみす捨て去るのか」と、日本の教育改革を遺憾視しているが、私は今回の改革を外面的に即評価するのではなく、いかにうまく教師が運用するかに今後期待したいと考えている。内容が3割削減されたといっても、残りの7割を徹底的に理解させた上で、今までにない新しい学力や生きる力(抽象的で何を目指せばいいか分かりづらいものの)を子どもたちが獲得してゆく可能性を信じていきたい。国際的に見たとき、知育重視とゆとりや生きる力の重視という両極が今、教育界を震わせている状況であるが、教育改革を各国と比較して長い眼で見てゆくことが必要なのではないかと感じる。
比較教育学概論 期末レポート(2002年夏)
<課題> 国際比較の視点から見た日本は、どのような特徴を持ち、どのような課題を抱え、どのように変化しているのか。講義に沿った具体例を挙げて論じてください。
“日本型教育システムの変化‐新しい学習指導要領・生きる力などの提唱”を、アメリカ・シンガポールにおけるコア・カリキュラムの論調・実践と比較し、日本の教育改革の今後を考察する。
1、はじめに~日本の教育改革を整理する
日本の教育改革は、新しい学習指導要領が本年度から実施されている中で、おそらく様々な形となって具現化されている頃であろう。指導要領の3割削減による学力低下に対する懸念、総合的な学習の時間における生きる力の育成などが注目されており、受験戦争の弊害という観点から行われた学習内容の削減に対する疑問の声と、総合的学習の成果に対する期待が入り混じった複雑な状況であるといえる。私なりに整理すれば、受験戦争のもとで行われてきたとされる教科学習による知識詰め込み教育から子ども主体の「自ら学び自ら考える」学習への移行が叫ばれたものの、そこに学力低下への懸念が台頭し、文科省が「学習指導要領=最低基...