近年の日本では若者の無気力化が問題だとされている。だが、社会制度が整い、食料の心配や身の危険を毎日感じながら生きている日本人もいないであろう近年の日本では、労働時間を減らしたりよりストレスのない環境を求めたりするのは当然ではないかと思っていた。なぜなら仕事が楽しいという人がそんなにたくさんいるとは思えず、子供の生活費や学費のためにいやな仕事もやめずに働いてきた人は少なくないと思ったからだ。
日本人の無気力と欲求
はじめに
近年の日本では若者の無気力化が問題だとされている。だが、社会制度が整い、食料の心配や身の危険を毎日感じながら生きている日本人もいないであろう近年の日本では、労働時間を減らしたりよりストレスのない環境を求めたりするのは当然ではないかと思っていた。なぜなら仕事が楽しいという人がそんなにたくさんいるとは思えず、子供の生活費や学費のためにいやな仕事もやめずに働いてきた人は少なくないと思ったからだ。そこで、そもそも人の持つ欲求とは何なのか、物質的な豊かさではなく他のものを求めはじめた、この新しい時代の日本人の欲求とは何なのかを調べることにした。
欲求について論文を書くと決めたときに思い出したのは高校生のときに欲求階層説というものを学んだことがあったということだった。人には食欲や睡眠欲、危険を回避したいといった本能的な欲求があり、それが満たされると高次な、社会的に認められたい、知識を満足させたい、他者を満足させたいという欲求が生まれるという。本能的な欲求というのはその人間や社会の維持のために必要不可欠であるが、社会的に認められたい、知識を満足させたいなどの欲求は、...