カティンの森を観て
本作品は第二次世界大戦中に起こった「カティンの森事件」をポーランド将校の妻とその家族や周りの人の視点を中心に描いている。歴史的事実を忠実に再現しており、かなり客観的な作品になっていて、映画というよりはむしろ、歴史ドキュメンタリーという性質が強いと感じた。
歴史的事実を題材にしているため、かなりリアルな描写となっている。例えば作品の至る場面で、実際の映像が挿入されており、作品がノンフィクションであることが強調されている。
・・・ポーランド人捕虜はコジェルスク、スタロビエルスク、オスタシュコフの3つの収容所へ分けて入れられた。その中の1つの収容所において1940年の春から夏にかけて、NKVDの関係者がポーランド人捕虜に対し「諸君らは帰国が許されるのでこれより西へ向かう」という説明を行った。この知らせを聞いた捕虜達は皆喜んだが、「西へ向かう」という言葉が死を表す不吉なスラングでもあることを知っていた少数の捕虜は不安を感じ、素直に喜べなかった。彼らは列車に乗せられると、言葉通り西へ向かいそのまま消息不明となる。・・・wikipediaより抜粋
上記の歴史的事実も忠実に再現されているシーンがある。
また作中には様々な登場人物が登場しているが、総じて、カティンの森事件がソ連によるものであることと、そのソ連によってポーランドが統治されていることに対する葛藤が描かれているように感じた。最たる例が、反ソ連感情を持つ青年や、ソ連に仕えていることに葛藤を感じ、自殺してしまう少尉である。
また全体的な描写として、晴れの日のシーンが一切無いことに気がついた。作品を通して野外のシーンは一貫して「曇り」である。この晴れることもなく、雨が降ることもないどっちつかずの天気は上記の「葛藤」を象徴」していると感じた。また、主人公をソ連軍の連行から救ったソ連人の存在も重要であると思う。全体を通してソ連が悪質である印象を持つが、心やさしい彼の存在は鑑賞者に「葛藤」を与えるのだ。
またドキュメンタリー性が強いと述べたが、唯一異なるのが、主人公の夫の生死が最後までわからないという点だ。これは鑑賞者に結末がどうなるのか、という興味を持たせ、最後に衝撃を与えるというエンターテイメント性抜群の描写であるといえる。