憲法論文答案練習裁判所 違憲審査権の法的性格

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    資料の原本内容

    憲法論文答案練習 裁判所
    ~違憲審査権の法的性格~
    【問題】
     日本国憲法における裁判所による違憲審査制の法的性格について論述せよ。
    【考え方】
     ・・・憲法81条は、裁判所による違憲審査制を規定するが、その法的性格をどのように捉えるかは争いがある。
    〈見解〉
     1)抽象的審査制説
      ・・・単なる違憲審査制であれば、司法権の本質から当然に導きだせるにもかかわらず、特に憲法81条という規定が置かれていること、憲法98条1項からして法令の合憲性を判定する機関の存在が当然予定されていること等を根拠として、裁判所は具体的な訴訟事件とは無関係に法令等の違憲性を一般的・抽象的に審査し、決定する権限を有するとする見解
     2)付随的審査制説
      ・・・母法であるアメリカ法の立場、裁判所の役割が抽象的な法の解釈をすることではなく国民の権利自由を守ることであること、憲法裁判は経験的素材に基づき十分熟慮されたものであることが望ましいが、それには司法権の本来の機能形態である具体的事件を契機とする法の適用解釈という形が最も適していること等を根拠として、裁判所は具体的な争訟を裁判するにあたって必要な限度で適用すべき法律等の合憲性を審査する権限を有するとする見解
    3)法律委任説
      ・・・一応、付随的審査制を前提としつつも、81条は最高裁に抽象的に違憲審査を行う憲法裁判所としての機能を付与することを禁じているわけではなく、法律で憲法裁判所としての機能を付与することも可能であるとする見解
    【答案例】
     憲法は裁判所に違憲審査権を認める(憲81条)が、その性格については争いがあり、この点について、裁判所が具体的な訴訟事件とは無関係に法令等の違憲性を一般的・抽象的に審査し決定しうる権限を有するとする抽象的審査制説がある。
     しかし、私は、この抽象的審査制説は妥当でないと考える。けだし、憲法が抽象的審査制を採用するものであるなら、憲法上、提訴権者の範囲、裁判手続の大綱、違憲判決の効力等につき何らかの規定がなされてしかるべきであるが、そのような規定はないし、抽象的審査制を認めては、立法権に対する司法権の優位を招き、三権分立の原則に反するおそれがあるからである。
     そこで、思うに、そもそも司法とは国民の具体的権利・利益の救済をその役割とするし、そのような具体的事件を契機とする法の解釈、適用における憲法判断こそが最も信頼に値する。また、憲法81条についても、かかる見地から司法裁判所としての最高裁判所の機能を規定したものと考えることができるし、このように考えても、同条はなお旧憲法下における違憲審査のあり方を否定するという積極的な意義を有するといえる。
     とすれば、裁判所は具体的な法律上の争訟を審査する権限を有すると考えるべきであり、したがって、わが憲法における違憲審査制の法的性格は具体的(付随的)な審査制であると解される。
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