1 、抵当権が及ぶ範囲
まず、抵当権の効力は、原則として果実には及ばないと解される。これは、抵当権は、目的物の占有を抵当権設定者のもとにとどめて、抵当権設定者が使用・収益をして被担保債権の弁済を容易にすることをその趣旨としているから、果実も抵当権設定者に収取されるべきとの考えである。
仮に、抵当権の効力が法定果実にも及ぶと解すると、抵当権者が賃料収益をことごとく吸い上げてしまうため、抵当権の趣旨を没却しかねない。この問題に関して判例は、法定果実には370条の適用がなく370条の例外規定である改正前371条も法定果実には適用がないとしていた(大判大正2年6月21日民録19 481頁)。
しかし、1980年代のバブル経済が崩壊に伴い、抵当目的物の価格が暴落し、売却代金のみでは被担保債権の回収が困難となったことから、物上代位による被担保債権を回収する手法が急増した。
そこで、平成15年の改正により、抵当権の実行方法の一つとして担保不動産収益執行(民事執行法180条2号)の方法が採用され、被担保債権につき不履行が生じたときは、抵当権者は担保不動産収益執行を申し立てて、賃料債権か...