生殖系
一般に魚類の雌雄を区別することは困難な場合が多い.性的二型を示す魚類が少ないうえに,その性的二型も成熟に達しない発育段階では識別ができなかったり,あるいは成熟に達した大きさでも季節的にしか性的二型が出現しなかったりするからである.この点では,軟骨魚類の雌雄の識別は容易である.雄には胎仔の時期から交尾器(clasper)が存在するから,かんたんに雄であることがわかる.もちろん例外的に雌雄同体現象(hermaphroditism)がみられることがある.たとえば,生殖器官としては雌の機能-卵巣-をもつのに,外部的には交尾器が認められることが,ネムリブカから報告されている(内田・戸田, 1996).しかし,一般的にはこのような雌雄同体現象は認められず,ふつうは雄に交尾器がみられるから,雌雄の区別は容易に行える.交尾器の構造についてはすでに外部形態の項で記述しているので,ここではふれない.また,生殖器官は雌雄で異なるので,別々に記述しよう.なお,繁殖様式などの繁殖特性は独立の項として詳述する.
(1)雄の生殖器官
精巣(testis)は,雄の腹腔背面の腎臓の腹面にある(図2-20)....