ラベリング理論を中心に考察した。多くのひとは、逸脱行動を日常的にしている。逸脱行動をしたという要件だけでは、ひとは「逸脱者」とはならない。あくまでも、逸脱者のレッテルを貼られることで、逸脱者が出来上がる。このメカニズムを、レッテルを貼られる度合いの差異のある集団や、他者からレッテルを貼られた人物とその周囲の人びとの反応を中心に展開する。最後に、ラベリング理論から導き出される今後の課題を述べまとめた。
引用、援用は注を付け、参考文献と共に典拠を明示している。
1 逸脱と犯罪
「逸脱者」のレッテルを貼られたひとの行為は、「正常な」人の行為とどのように違ったかたちで解釈されるのだろうか。
2 社会学の主たる研究テーマのひとつが秩序問題である。それらは社会問題、社会への協力行動、成員間の相互行為などに関連した問題領域である。具体的には、治安と犯罪、逸脱行動、地位と権力、社会的ジレンマなどである。いずれも興味を惹く内容であるが、今回は「逸脱」「ラベリング理論」に関連する問いを選んだ。その理由は、昨年、旧友が大型投資詐欺で逮捕されたことにある。この事件より、「逸脱とは何か」「逸脱者に対する人びとの反応とは如何なるものか」と漠然と考えていたと思う。今回、この好機に恵まれ逸脱行動についての人びとの反応や解釈を考察できることを感謝したい。
3 1960年代以降、犯罪、非行、不道徳行為、異常行動、狂気など、一般に逸脱行動と呼ばれる問題領域に関する社会的理論は、大きな転機をむかえた。
古くより、逸脱研究の創始者であるデュルケムをはじめとする機能主義(構造論)の社会学者たちは、「なぜあるひとは逸脱をし、あるひとは逸脱しないのか」ということを出発点と...