12赤いレンガの衝撃(刑法事例演習教材)

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    刑法事例演習教材
    12 赤いレンガの衝撃
     Aに対する罪責について
    甲は、Aに対し、その顔面を突く暴行を加え、Aは死亡した。このことにより、甲には、傷害致死罪が成立するのではないか(205条)。
     甲の行為は、傷害致死罪の構成要件に該当するか。
     まず、甲の行為とAの死亡結果との間に、因果関係が認められるか。
    刑法上の因果関係は、条件関係では足りず、相当因果関係があることを要する。そして、相当性の判断は、一般人が認識または予見しえた事情および行為者が特に認識予見していた事情を基礎として判断する。
    本件では、甲の行為とAの死亡結果との間には条件関係がある。そして、その間には、EがAの状態を緊急性のないものと誤診し帰宅させた過失行為 が介入している。しかし、傷害結果を負った被害者が病院で診察を受けたとしても、その症状次第では緊急性を判断することが困難であるために誤診が生じうることは、さほど特殊な事情とはいえず、一般人にとって予見しうる事情であるといえる。そうであるならば、Eの過失行為の介入があったことを前提としても、甲の行為からAの死亡結果が生じることは、社会通念上相当といえる。
    したが...

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