小学校英語教育導入に関して留意すべき点・課題
(1)長期的な視点・目標について
小学校に英語を導入することの目的の設定は必要不可欠である。本論で言及した韓国・台湾・日本の目標の共通項目を挙げると、次のようになる。すなわち、「外国語でのコミュニケーション能力を身につけること」「外国の言語や文化への興味・関心を高めること」である。2002年に文部科学省は「『英語が使える日本人』の育成のための戦略構想」を発表した。だが、バトラー(2005)はこの構想にはイデオロギー上で未整理の問題がいくつかあると指摘している。
まず、英語教育の目的の問題である。つまり、将来の日本を担う子どもたちに、日本の経済的、政治的、技術的競争力を高めるために、英語を身につけさせたいのか、それとも、多言語化、多文化、を推進するための一つの足掛かりとして、日本語以外の言語を一例として教えたいのか、という問題である。前者が理由であればグローバル化していく国際社会で生き残る手段として、最も普及率の高い英語の習得を重視する必要がある。しかし、後者が理由であれば、教える外国語が英語である必然性はないこととなる。
二つ目の問題と...