日中関係の歴史について、谷崎潤一郎の考えを基に考察を加えたもの。
谷崎潤一郎の中国に対する姿勢の特徴
和語や日本の伝統美を大切にする作家谷崎潤一郎。耽美主義で、時流に乗らず、自分のポリシーを貫く作家のイメージがある。
その谷崎潤一郎が中国文壇との交流に功があることを知り、驚いた。谷崎潤一郎といえば、『陰翳礼賛』のように、ものが持つ美しさを多角的に観察、流れるようなことばでの表現はとても個人的な思索の作家と思っていたからだ。
日本的な美を追究すると、あらゆる箇所に歴代中国の陰が見え隠れする。それは日本と中国の歴史的かかわりを思うと至極当たり前のことである。そして、谷崎潤一郎が、中国の工芸や演劇、料理にいたるまで、『支那趣味』といわれる中国の、中国的な美に...