我が国の民法は「総則」「物権」「債権」「親族」「相続」の5つの編から成り、私人の様々な関係について規定している。法律が元来予定している社会とは、社会の構成員全てが「自由・平等・独立」の人格を有する市民社会である。しかし、資本主義の発展と社会の進展に伴い、こうした抽象的人格を想定する法律はその実際的効力を失いつつある。そこで、私人像の多様化に対応し、現実の私人紛争に適用可能であるように私法は、弱者保護と強者規制の規定を設けるに至った。その前提にあるのは、経済発展と社会構造の高度化に伴い、社会を構成する個人に経済的・社会的立場での多様性が存在する事の承認である。私人関係を総括する形で規定しているのが第一編の「総則」であり、経済的権利関係について規定しているのが第ニ編の「物権」と第三編の「債権」である。さらに第四編の「親族」と第五編の「相続」は社会的(身分的)権利関係について規定している。
民法は経済的利益をもたらす権利として「物権」と「債権」を設けている。「物権」は人の物に対する権利であり、「債権」は人の人に対する権利である。両者を各々別の編を設けて定めているのには、「物権」と「債権」との権利の客体の差異だけが理由ではない。様々な権利の内容・構造の差異が両者には存在している。そうした両権利の多様な違いの中から、物権の最も典型的な効力についてレポートする。
「物権法・担保物権法」レポート課題
『物権の一般的効力』
<はじめに>
我が国の民法は「総則」「物権」「債権」「親族」「相続」の5つの編から成り、私人の様々な関係について規定している。法律が元来予定している社会とは、社会の構成員全てが「自由・平等・独立」の人格を有する市民社会である。しかし、資本主義の発展と社会の進展に伴い、こうした抽象的人格を想定する法律はその実際的効力を失いつつある。そこで、私人像の多様化に対応し、現実の私人紛争に適用可能であるように私法は、弱者保護と強者規制の規定を設けるに至った。その前提にあるのは、経済発展と社会構造の高度化に伴い、社会を構成する個人に経済的・社会的立場での多様性が存在する事の承認である。私人関係を総括する形で規定しているのが第一編の「総則」であり、経済的権利関係について規定しているのが第ニ編の「物権」と第三編の「債権」である。さらに第四編の「親族」と第五編の「相続」は社会的(身分的)権利関係について規定している。
民法は経済的利益をもたらす権利として「物権」と「債権」を設けている。「物権」は人の物に対する権利であり、「債権」は人の人に対する権利...