早期離床の意義
手術後の回復は早期離床が順調に進むかどうかに大きく影響される。必要以上の安静は、術後廃用症候群の発生につながり、むしろ回復の妨げになると考えられている。術式にもよるが、多くの場合、呼吸および循環動態が安定し、手術創に問題がなければ、早期に起座、起立、歩行へと安静度を拡大していく。また、脳外科、整形外科などの場合、手術当日の夜から食事を再開することも珍しくない。早期離床の利点は以下のとおりである。
呼吸器合併症の予防
呼吸時に臥床していることで起座や立位に比べ横隔膜が下がりにくく、肺の換気量が低下する。吸気時に肺胞が十分に広がらず、ガス交換を行う範囲が狭くなる。麻酔薬や気管挿管の影響で分泌物が増えていることも影響し、無気肺を生じることもある。
また、臥位でいることにより肺の下側(背側)にうっ血が起こり沈下性肺炎を起こす可能性もある。早期離床によって、深呼吸がしやすく疾の喀出も容易になり、肺の下側のうっ血も起こりにくくなることで、これらの合併症を予防することができる。
血栓形成および塞栓症の予防
手術により血行動態が影響を受け血管内脱水を生じたり、手術中の長時問にわたる同一...