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多文化共生社会の現状および問題について述べよ。
(1)はじめに
現在社会では、グローバル化によって人々の移動が活発化し、多文化主義や多文化共生をめぐるさまざまな問題点が顕在化している。労働を求めて移動する労働移民は世界中で増加傾向にあり、移民の送出・受容にともなって、言語、文化、法律、生活保障、労働契約など様々な問題が議論されている。このように移民は日本のみならず世界中で同時多発的に起きている現象であり、重要な論点を内包している。本稿では、多文化共生社会の現状および問題点について、移民に焦点を当てながら考察する。
(2)多文化主義と多文化共生の議論
多文化主義や多文化共生をめぐる問題はさまざまであるが、たとえば1960年代以降のカナダやオーストラリアの国民統合政策のように、多文化主義は国民統合の手段であるという指摘がある。また、西川長夫は、多文化主義はマジョリティ側の論理であり、先住民、移民、旧植民地の住民の側の視点が欠如していと指摘する。さらに、前川啓治は、多文化主義はあからさまな人種差別ではないが、多文化主義によって隠されている問題があり、差別の構造をあいまいにしていると述べた...