被害者の承諾
被害者の承諾とは、法益の帰属者(法益の主体)である被害者が、事故の法益を放棄し、その傷害に承諾又は同意を与えることである。「承諾者には、不法は成されない」とのローマ法の諺に示されているように、被害者の承諾は、古くから、被害者に対する侵害行為の違法性を阻却する効果を持つものと解されてきた。しかしながら今日では、被害者の承諾は、単なる違法性阻却事由として存在するだけでなく、個々の犯罪の特性に応じた種々の法的効果が与えられている。被害者の承諾が構成要件該当性の成否に与える影響については下記のような類型に分けることができる。
1被害者の承諾のないことが明示的又は黙示的な構成要件要素になっている場合。2被害者の承諾のあることが構成要件要素になっている場合。3被害者の承諾があっても何ら犯罪の成否に影響しない場合。4被害者の承諾が違法性の存否・強弱に影響を与える場合。がある。
1について、被害者が承諾しないこと、すなわちその行為が被害者の意思に反することによって初めて実行行為の実質を有することになるので、被害者の承諾がある場合には、そもそも構成要件該当性が認められない。
2について、これらは...