はじめに、近年では子どもの理科離れが指摘され、日本の科学分野の遅れにつながることが危惧されている。そのため、学校教育における理科も内容の見直しが進んでいる。そこで本稿では、指導要領に「児童の実感を伴った理解」という文言が加わったことを受け、その内容や目標に置かれた背景について説明し、具体的に指導方法について検討する。
1.背景
まず、指導要領に「実感が伴った理解」との文言が加わったのには、どのような背景があるのか考えたい。これは、小学校の理科授業が従来は、知識を教え込むことに偏重しており、児童の身近な興味・関心に拠るものからはかけ離れていた反省からきている。本来、理科の知識は、実験や自然観察の現象の中から、自分で科学的な知識を見出すものであり、感動や驚きをもって知を体得するものである。しかし、従来の学校理科では、時代と共に蓄積されてきた既に世ある知識を児童に教え込み、いかに暗記ができたかをテストによって測ることを中心にしてきた。そのような学習は、理科嫌いを増長し、深く納得した理解をすることもできない。そこで、学校教育も実感重視に転換し、好奇心をもって実験・観察をし、実感を伴った理解が重...