論証:争点効理論否定説
争点効とは、 前訴で当事者が主要な争点として実際に争い、かつ裁判所がこれを審理して下した判断について生じる通用力で、同一の争点を主要な先決問題とした別異の後訴請求の審理において、その判断に反する主張立証を許さず、これと矛盾する判断を禁止する効力をいう。解釈として、このような効力を認めるか問題となる。 この点、 争点効理論を肯定する見解がある。 確かに、 紛争の一回的解決や当事者間の公平を図ることができる。 しかし、 争点効は明文に根拠がないし、その要件は曖昧であるため、制度的拘束力として認めるのは妥当でない。例えば、係争利益や主要な争点という概念はそれ自体曖昧である。また、前訴の手続経過を調べる必要があるため審理の複雑化を招くおそれがある。さらに、裁判所の判断に瑕疵があった場合、その瑕疵は後訴に拡大していくこととなり妥当でない。 従って、 制度的拘束力としての争点効は認められないと解する。 むしろ、 明らかに不当な結果が生ずる場合には、信義則に基づき(2条)、個別的に例外を認め、判決理由中の判断に拘束力が生じる場合を認めるべきであろう。