暴力について

閲覧数1,807
ダウンロード数5
履歴確認

    • ページ数 : 2ページ
    • 会員550円 | 非会員660円

    資料紹介

    ○ ヨハン・ガルトゥングによる暴力の定義
     まず、「暴力」というものについて考える上で欠かせない人物がいる。それが、オスロ国際平和研究所の創設者でもあり、現在は紛争転換の国際NGO「TRANSCEND」の代表も務める現代平和学の第一人者、ノルウェーのヨハン・ガルトゥングである。
     ガルトゥングは平和の概念を「暴力の不在」と位置づけ、「ある人にたいして影響力が行使された結果、彼が現実に肉体的、精神的に実現しえたものが、彼のもつ潜在的実現可能性を下まわった場合、そこには暴力が存在する」とした上で、暴力の定義について次のように述べる。
     暴力はここでは、可能性と現実とのあいだの、つまり実現可能であったものと現実に生じた結果とのあいだのギャップを生じさせた原因、と定義される。
     その例として、次のような場合を挙げる。
     もし18世紀に人が結核で死亡したとしても、これを暴力とみなすことは困難である。なぜならば、当時結核で死亡することは避けがたいことだったからである。しかしもし、世界中に医学上のあらゆる救済手段が備わっている今日、人が結核で死亡するならば、われわれの定義によれば、そこには暴力が存在する。
     この定義によれば、世界中はもちろん、自分の身近にも数え切れないほどの「暴力」が存在することになる。そう考えると悲観主義に陥りやすいが、それは「ある種の知的・道徳的敗北主義」だとされ、「価値実現を促進するための努力」こそが大切であり、平和研究であるという。平和への道のりはとてつもなく遠いが、一人ひとりが「暴力の不在」としての平和について考えること、そしてそれに向かう意志を持つことができるかどうかが未来を左右するのである。
     また、「暴力」の側面を特徴づける最も重要な区別として、「主体」について論じている。

    資料の原本内容 ( この資料を購入すると、テキストデータがみえます。 )

    暴力について
    ○ ヨハン・ガルトゥングによる暴力の定義
    まず、「暴力」というものについて考える上で欠かせない人物がいる。それが、オスロ国際平和研究所の創設者でもあり、現在は紛争転換の国際NGO「TRANSCEND」の代表も務める現代平和学の第一人者、ノルウェーのヨハン・ガルトゥングである。
    ガルトゥングは平和の概念を「暴力の不在」と位置づけ、「ある人にたいして影響力が行使された結果、彼が現実に肉体的、精神的に実現しえたものが、彼のもつ潜在的実現可能性を下まわった場合、そこには暴力が存在する」とした上で、暴力の定義について次のように述べる。
      暴力はここでは、可能性と現実とのあいだの、つまり実現可能であったものと現実に生じた結果とのあいだのギャップを生じさせた原因、と定義される。
     その例として、次のような場合を挙げる。
    もし18世紀に人が結核で死亡したとしても、これを暴力とみなすことは困難である。なぜならば、当時結核で死亡することは避けがたいことだったからである。しかしもし、世界中に医学上のあらゆる救済手段が備わっている今日、人が結核で死亡するならば、われわれの定義によれば、そこには...

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。