アニマルウェルフェアとは、動物福祉のことで、ヒト以外の動物にも、ヒトと同様の生存権を認めようという考え方である。ヒトの生命を奪ってはならないのと同様に、ヒト以外の動物の生命も奪ってはならないという主張である。いわゆる「菜食主義(ベジタリアン)」という理念の背景にも同様の主張がある。しかし「動物の生きる権利」を主張する立場は、食事だけではなく、ヒト以外の生命をヒトのために利用することを一般に拒否する。牛や豚を食べないだけではない。たとえば医学実験にマウスやヒヨコを使うのも拒否する。もちろん、どのような主張にも色の濃淡はあるから、どこまでがという厳密な線は引けない。しかし、「動物の生きる権利」と一般に呼ぶ理念は、ヒト以外の動物に生存権を認め、殺生を禁ずる立場だと言える。それに対して「動物福祉」という理念は、
家畜行動学レポート
1、アニマルウェルフェアとは
アニマルウェルフェアとは、動物福祉のことで、ヒト以外の動物にも、ヒトと同様の生存権を認めようという考え方である。ヒトの生命を奪ってはならないのと同様に、ヒト以外の動物の生命も奪ってはならないという主張である。いわゆる「菜食主義(ベジタリアン)」という理念の背景にも同様の主張がある。しかし「動物の生きる権利」を主張する立場は、食事だけではなく、ヒト以外の生命をヒトのために利用することを一般に拒否する。牛や豚を食べないだけではない。たとえば医学実験にマウスやヒヨコを使うのも拒否する。もちろん、どのような主張にも色の濃淡はあるから、どこまでがという厳密な線は引けない。しかし、「動物の生きる権利」と一般に呼ぶ理念は、ヒト以外の動物に生存権を認め、殺生を禁ずる立場だと言える。それに対して「動物福祉」という理念は、究極のところで、ヒトがヒト以外の動物の生命を犠牲にすることを認めている。そうせざるをえない2つの理由がある。第1に、ヒト以外の動物をヒトが利用するのはヒトの本性だからである。草を草食獣が食べ、その草食獣を肉食獣が食べる。自然界にはそうした...