アップルのデジタル音楽市場における戦略を概観すると、開発段階からの念入りなマーケティングが功を奏していることがうかがえる。すなわち、従来はソフトとハード、そしてサービスがばらばらに提供されていたデジタル音楽市場において、アップルは統合されたデジタル音楽ソリューションを提示したのである。
アップルの戦略によって、消費者のデジタル音楽シーンは大きく変化したと一般的に言われている。これまでは、音楽データを携帯する場合、MDにせよCDにせよ、あるいはMP3などの圧縮ファイルにせよ、あらかじめ出先で聴く音楽を選び、それを持ち出す必要があった。アップルの開発したiPodは当初から5GBのハードディスクを搭載しており、「手持ちの音楽をすべて携帯する」というまったく新しいデジタル音楽の利用方法を可能にしたのである。
これはアップルの製品が結果的にそのような利用シーンを生み出したのではなく、アップルのスティーブ・ジョブズCEOのマーケティング手腕によるものだとアップルは述べている。
今後、2005年には前出のiTMSが日本でもサービスを開始する予定で、すでにソニーなど主要レーベルが提供している同様のサービスMoraとどのように競争していくかが注目されている。
諸外国のようにデジタル音楽市場が今後ますます拡大するのは確実だが、それに伴い既存の店舗ベースの音楽市場が縮小するかどうかは、CDというメディアを生かした新しい製品を開発できるかどうかにかかっていると言える。
デジタル音楽市場におけるアップルの開発戦略
.1.はじめに
昨今、インターネットの一般家庭への浸透に伴い、旧来 CD で提供されてきた音楽がコンピューターったのが米アップル社のデジタル音楽プレイヤー・iPod(アイポッド)および同社の音楽管理ソフト・iTunes(アイチューンズ)である。
そこで本レポートではアップル社のデジタル音楽市場におけるマーケティングについて、商品開発の点から分析し、論じてみたい。
.2.デジタル音楽市場の創出と変遷
..2.1.デジタル音楽の定義
本レポートにおいてデジタル音楽とは、コンピューターで扱える形式の音楽データのことを指す。音楽 CD に収録された楽曲もデジタル形式ではあるが、ここで言うデジタル音楽とは電磁的なデータ形式のファイルを言う。
..2.2.市場しての黎明期
デジタル音楽の形式には、圧縮形式と非圧縮形式とに大別される。非圧縮形式とは音楽 CD に収録されたデジタルデータと同様、音高と音圧とが時間軸に沿ってデータ化されたいわゆる PCM 音源であり、これはデジタル形式の音声が扱えるようになったごく初期の段階から存在した。
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ただ、ハッピーポイントの価格が少し高いきがしました。