本実験は、フィッシャーエステル合成反応を用いてバナナの香りを持つエステルである酢酸イソアミルを合成し、その香りを確認することを目的とする定性的な実験である。
[緒言]
●エステルとは
[実験]
●使用試薬と生成物の物性
●使用試薬の量
●使用器具と装置図
装置のポイント
分液ろうとの使い方
●実験操作
[結果]
[考察]
●香りに関する考察
[参考文献]
[緒言]
本実験は、フィッシャーエステル合成反応を用いてバナナの香りを持つエステルである酢酸イソアミルを合成し、その香りを確認することを目的とする定性的な実験である。
エステルとは、果物の香気成分の一種である。酢酸、プロピオン酸、酪酸などのカルボン酸は、それぞれ特有のきついにおいを持っているが、それらをエステル化したものは果物のような芳香を有する。エステルは、有機溶媒、塗料、接着剤などへの利用、薬剤への利用の他に、その匂いを利用して食品、化粧品、せっけんなどの添加物として利用されている、生活に身近な物質のひとつである1)。
カルボン酸エステルは、カルボン酸とアルコールの脱水縮合によって得られる。これは、以下の反応で示され、カルボン酸のカルボニル酸素がプロトン化を受けて分極が強まることで、弱反応性のアルコールによる求核攻撃が起こりやすくなることによるものである。これをフィッシャーのエステル合成反応と呼ぶ。この反応は前後でH+の濃度が変化しないことから、平衡反応であるといえる。平衡反応は平衡定数に支配されている可逆反応であり、平衡定数を一定に保つように反応の平行を移動させる性質を持つ。こ...