1[目的]
2-プロパのールとベンゼンの様々な組成の混合溶液について、組成-温度曲線を作る。
2[原理]
ラウールの法則 2-1)
ラウールの法則は、
「溶液の成分の蒸気圧が、その成分の溶液中のモル分率に比例する」と
いうもので、もし成分 A がこの法則に従うならば、その蒸気圧はつぎのように表せる。
PA = xA PA∗
ラウールの法則
式(2.1)
したがってラウールの法則に従う溶液の成分の場合の化学ポテンシャルはつぎのようにな
る。
μ = μ∗A + RT lnxA
式(2.2)
この溶液の成分の化学ポテンシャルの式を、1mol の溶液がその純粋な成分から生成すると
きの自由エネルギーを表す式にすると、
Gpure = xA μ∗A + xB μ∗B
および Gsoln = xA μA + xB μB
式(2.3)
となる。混合過程において、ΔGmix はつぎのようになる。
ΔGmix = ΔGsoln + ΔGpure = RT xA lnxA + xB lnxB
式(2.4)
相律 1-1)
ラウールの法則から正の方向に大きくずれる二成分混合溶液は蒸気圧-組成曲線で極大値
を示す。したがって、蒸気圧の極大値に相当する組成の混合液は二成分混合溶液でも最低
の沸点を示す。図 2.1 から液相線と気相線は最低の沸点で一致していることがわかる。
自由度を F、系を構成する成分の数を C、相の数を P とするとつぎのような関係がある。
F=C−P+2
式(2.5)
図 2.1 温度-組成図
ここで、定圧下での二成分系において、上式は次のようになる。
F = 3−P
式(2.6)
残りの自由度の一つは温度で他は組成である。図の点 M に相律を適用するとき、この点に
おいて、液体と気体は共存しているので、F=0 となる。混合物が組成を変えることなく蒸
留される現象を共沸という。
3[実験]
試薬:ベンゼン、2-プロパのール
器具:蒸留装置、アッべ屈折計
操作
1、ベンゼンと 2-プロパのールを体積比 0:10、1:9、2:8・・・9:1、10:0 の比
で混合した。2、この 11 個の混合溶液の屈折を温度と共に測定した。3、混合溶液中
の 2-プロパのールのモル分率び対して屈折率をプロットし検量線を作った。4、蒸留
装置を組み立てて、純ベンゼン 50ml をフラスコに入れて沸点を測定した。5、次に 2
-プロパのールを 2ml 加えて、毎秒 2~3 滴の蒸留液が落ちるように調整して混合液を
蒸留した。初めの 1ml 程度は残し、その後の蒸留液を回収し、このときの温度を記録
して蒸留を中止した。6、蒸留液とフラスコ内の残余液の屈折率を測定した。7、測定
後、蒸留液のサンプルを蒸留フラスコに戻し、以上の操作を 2-プロパのールの添加量
2、5、10、15ml に対しても行った。8、フラスコを空にし、2-プロパのールで共洗
いしてから蒸留フラスコに 2-プロパのール 50ml を加えた。9、初めに 2-プロパの
ールの沸点を測定して、操作 5~7 と同様にベンゼン 10ml、20ml を加えて屈折率を測
定した。10、得られた結果から、残余液中の 2-プロパのールのモル分率に対する沸
点を、蒸留液中の 2-プロパのールのモル分率に対する沸点をプロットして、液相線と
気相線を作った。
4[結果]
ベンゼンと 2-プロパノールを様々な体積比で混合した溶液の屈折率の測定結果を表 4.1 に
混合溶液中の 2-プロパノールのモル分率に対する溶液の屈折率をプロットしたものを図
4.1 に示す。
また、純ベンゼンの沸点の文献値は 80.1 度。純 2-プロパノールの沸点文献値は 82.3 度
である。
表 4.1 混合溶液の屈折率
benzen
2-propan
benzen の
2-propanol
モル分率
のモル分率
屈折率 n
温度/℃
0
10
0
1
1.3754
23.9
1
9
0.0872
0.9128
1.3867
23.9
2
8
0.1769
0.8231
1.3981
23.6
3
7
0.2692
0.7308
1.4079
24.0
4
6
0.3643
0.6357
1.4222
23.9
5
5
0.4623
0.5377
1.4332
24.2
6
4
0.5632
0.4368
1.4451
23.8
7
3
0.6673
0.3327
1.4604
23.8
8
2
0.7747
0.2253
1.4715
23.9
9
1
0.8855
0.1145
1.4849
23.7
10
0
1
0
1.4984
23.9
図 4.1 2-プロパのールのモル分率に対する屈折率のプロット
図 4.1 の直線の式より 2-プロパノールの屈折率と組成の関係式はつぎのようになる。
X=
n − 1.4994
−1.234
式(4.1)
X は 2-プロパノールのモル分率で、nは混合溶液の屈折率である。以下の表 4.2、4.3 中
のモル分率は式(4.1)から求めたものである。
表 4.2 はベンゼン 50ml に 2-プロパノールを添加した混合溶液を蒸留した結果で、表 4.3
は 2-プロパノール 50ml にベンゼンを添加した混合溶液を蒸留した結果である。
表 4.2 ベンゼンを多く含む混合溶液の沸点と屈折率の測定結果
残余
沸点
2-propanol
(始)
0
蒸留
温度
温度
残余
蒸留
蒸留
benzen
2-propaol
benzen
2-propanol
沸点/℃
屈折率
79.9
1.4989
23.8
1.4989
23.6
1.0000
0.0000
1.0000
0.0000
/℃
屈折率
残余
/℃
2
75.5
77.7
1.4941
23.8
1.4741
23.9
0.9571
0.0429
0.7950
0.2050
2
75.2
75.8
1.4909
23.5
1.4742
23.9
0.9311
0.0689
0.7958
0.2042
5
71.6
71.7
1.4785
23.9
1.4563
23.9
0.8306
0.1694
0.6507
0.3493
10
71.1
71.3
1.4595
24.0
1.4521
24.0
0.6767
0.3233
0.6167
0.3833
12
71.2
71.2
1.4443
24.0
1.44808
24.0
0.5535
0.4465
0.5841
0.4159
表 4.3 2-プロパノールを多く含む混合溶液の沸点と屈折率
残余
benzen
沸点
(始)
沸点/℃
屈折率
蒸留
温度
/℃
屈折率
温度
/℃
残余
残余
蒸留
蒸留
benzen
2-propaol
benzen
2-propanol
0
82
82.1
1.3749
24.3
1.3746
24.4
0
1
0
1
10
72.2
72.4
1.4173
24.1
1.4392
24.2
0.3347
0.6653
0.5122
0.4878
20
71.6
71.7
1.4334
23.8
1.4449
24.2
0.4652
0.5348
0.5583
0.4417
図 4.2 は 2-プロパノールのモル分率に対する残余液と蒸留液の沸点をプロットした図であ
る。
84
82
A
温度/℃
80
残余
78
蒸留
76
E
B
74
72
70
残余
C
D
蒸留
D
0.0000
0.2000
0.4000
0.6000
0.8000
2-プロパのールのモル分率
1.0000
1.2000
図 4.2 2-プロパノールのモル分率に対する沸点のプロット
したがって、共沸点は
5[考察]
図 4.2 の B、C の領域(線を含む)では液体と蒸気が共存しているので P=2 で、圧力一定のも
とで、自由度 F は1である。したがって、ある温度において平衡にある相の組成は自動的
に決まる。A、D の領域(線を含まない)では相数は1であるので、自由度は F=2 となり温度
と組成の両方の値を好きなように選ぶことができる。点 E での自由度は0であり、このと
きの温度は 71.2 度で、組成はほとんど同じ値であった。
また、式(2.4)より点 E におけるギブズエネルギー変化の値は等しいはずであり、この点
に達するまで(点 E を境に左側の領域、表 4.2 の値について)の液体と蒸気のギブズエネ
ルギー変化は減衰していくはずである。実際に式 に表 4.2 の残余、蒸留でのベンゼンのモ
ル分率を xA、2-プロパノールのモル分率を xB として求めたものを表 5.1 に、グラフ化し
たものを図 5.1 に示す。
表 5.1 各温度に対する混合ギブズエネルギー変化
沸点/℃
残余 Δ G(J/mol)
蒸留 Δ G(J/mol)
差 (%)
77.7
-516.9
-1479.8
6...