物理化学 実験E-1

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    資料紹介

    資料の原本内容

    [目的]
    様々な有機溶媒の屈折率を測定して、原子屈折と分子屈折率に加成性が成立するを確認す
    る。さらに、水-エタノール、トルエン-ベンゼンの2成分系の屈折率と組成の関係を調
    べる。
    [原理
    モル分極 2-1)
    電場をかけることによって分子内の電子分布がひずみ、すべての分子に誘起双極子モーメ
    ントが生じる。
    ある分子に働く電場ℰint は、いくつかの寄与に分けて考えることができ、図 2.1 より電極
    上の電荷、電極に接している誘電体の境界にある電荷、および
    分子を取り囲むものといして仮定された小さな空孔の表面に
    ある電荷のすべてが、その分子に働く電場に寄与すると考え
    られる。これらの項の総和はつぎのようになる。
    ς

    p

    p

    0

    0

    ℰint = ϵ − ϵ − 3ϵ

    式(2.1)

    0

    ここで最後の項は空孔の電荷の寄与である。この項は、電極
    版に垂直な方向の電場の生成についてのその表面電荷の寄与
    を、その球の全表面にわたって積分することによって得られ

    われる分子に働く電場ℰint

    る。ここで、
    ℰint =

    図 2.1 誘電体内の空孔の中にあるとして扱

    ς−p

    または ℰint = ℰo −

    ϵ0

    p
    ϵ0

    式(2.2)

    の関係式を用いるとσを消去することができてつぎの式が得られる。
    p

    ℰint = ℰ + 3ϵ

    0

    または p = 3ϵ0 (ℰint − ℰ)

    式(2.3)

    さらに、次式を使うことによってℰを消去することによって、
    ℰ=

    p
    ϵ0 (ϵ/ϵ0 −1)

    式(2.4)

    p とℰint の関係を得ることができる。
    p=

    ϵ
    ϵ0

    3ϵ0 ( −1)
    ϵ
    +2
    ϵ0

    ℰint

    式(2.5)

    誘電体の単位体積あたりに誘起される分極と、誘電体の分子に働く電場が比例するので、
    分子の電気的剛性について知ることができる。分子の分子分極率αを使って、その分子に
    働く電場ℰint によって生じる分極を説明することができる。密度をρ、分子量を M とする
    と、単位体積あたりの分子数は(ρ/M)NA となるので、pとℰint の関係は次のようになる。

    p=

    ρ
    N α ℰint
    M A

    式(2.6)

    式(2.5)と比較すると、つぎのようになる。
    ϵ
    3ϵ0 ( − 1)
    ρ
    ϵ0
    N α=
    ϵ
    M A
    +2
    ϵ0

    式(2.7)

    モル分極 PM は、
    ϵ
    − 1M
    ϵ0
    PM = ϵ
    +2 ρ
    ϵ0

    式(2.8)

    のように表されるので、分子分極率αとモル分極 PM はつぎのような関係がある。
    PM =

    NA α
    3ϵ0

    または α =

    3ϵ0 PM
    NA

    式(2.9)

    この式から分かるように PM はモル体積[cm/mol]の単位をもつ。また、αは次のような関係
    式を使って分極率体積α’で表される。
    α′ =

    α
    4πε0

    式(2.9.1)

    このようにα’は体積の次元をもつことになり、分極率体積は実際の分子体積と同じくらい
    の大きさである。
    原子や分子における HOMO-LUMO 間隔との間に相関がある。LUMO のエネルギーが
    HOMO に近いところにあると、電子分布を容易に歪ませることができるので、分極率が高
    くなる。LUMO が HOMO よりずっと上にあると、外場が電子分布をあまり変化させられ
    ないので、分極率は低くなる。すなわち、大きくて、たくさんの電子もをっている分子は
    分極率も高くなる。
    屈折率と分極 2-2)
    モル分極は、物質の比誘電率を使って式()で表される。分子の分極により誘起された双極子
    に着目することによって、物質の比誘電率の代わりに屈折率を用いることができる。
    物質の屈折率は、真空中の光の速度と物質中の光の速度の比である。誘電体中での速度
    は、真空中での速度よりも非常に小さい。この減速は、媒体中の分極可能な分子の電子が、
    電磁波の振動電場と相互作用することによるものである。分子の永久双極子も相互作用し
    てもよいが、屈折率を測定するのに用いられる可視光の振動電場は 1015Hz 程度であり、分
    子はこの電場の振動に同調するほど速く向きを変えることはできない。したがって、分極
    率だけが光の進行に影響を及ぼす。
    Maxwell の理論によれば、永久双極子をもたない分子かなる物質の場合、n をその物質

    の屈折率とすると、つぎのようになる。
    ϵ
    = n2
    ϵ0

    式(2.10)

    媒質中の分子が双極子モーメントをもっている場合でも、全モル分極中のモル分極 PM はつ
    ぎのようになる。
    PM =

    n2 − 1 M
    n2 + 2 ρ

    式(2.11)

    純有機液体の分子量と屈折率との関係 1-1)
    分子量 M と屈折率nとの間には同族列について次のような関係がある。
    n = n1 −

    A
    M

    式(2.12)

    ここで、n1 と A は定数である。飽和鎖状炭化水素では n1≒1.47 であることが認められてい
    る。
    [実験]
    器具
    アッべ屈折計、恒温水槽、ゲーリュサック比重計、30ml 共栓付三角フラスコ、10ml メス
    フラスコ
    試薬
    試薬1:エタノール、アセトン、四塩化炭素、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、メチ
    ルエチルケトン、試薬2:n-ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、n-デカン、n-ト
    リデカン、n-ヘプタデカン
    実験1:有機溶媒の屈折率の測定
    試薬1と n-ヘキサンをアッべ屈折計を用いて屈折率を測定し、このときの恒温水槽の温度
    も同時に測定した。これから分子屈折率を算出して原子屈折との間に加成性が成り立って
    いることを確認した。
    実験2:飽和鎖状炭化水素の屈折率の測定
    試薬2の飽和鎖状炭化水素を屈折を同様に測定した。そして、得られた屈折率を縦軸に分
    子量の逆数を横軸にとり、測定結果をプロットした。
    実験3:2成分系の屈折率と組成の関係
    水-エタノール、トルエン-ベンゼンの混合水溶液を(水:エタノール)を体積比(0:10)、(1:
    9)・・・(0:10)のように調整して作った。そして、各混合溶液の密度をゲーリュサック比
    重計を用いて測定した。次に、屈折率を測定し、これからモル屈折率を求め、エタノール(ベ
    ンゼン)のモル分率に対する混合溶液の屈折率とモル屈折率をプロットしてグラフを作成し

    た。
    [結果]
    実験1での測定結果を表 4.1 に示す。測定された分子屈折の値は理論値と非常に近い値とな
    り、分子屈折率と原子屈折率との間に加成性が確認できる。また、測定中絶えず恒温水槽
    の水温は変化していて、同じ物質について温度差があるときに、屈折率を測定してみると
    小数点第4ケタでの変化が見られた。

    表 4.1 実験1における屈折率の測定結果
    分子量 M

    密度 d

    (g/mol)

    (g/cm3)

    M/d

    屈折率 n

    温度

    分子屈 Rm

    (℃)

    (cm3/mol)

    原子屈

    差 %

    エタノール

    46.07

    0.7892

    58.373

    1.3631

    24.2

    12.982

    12.961

    0.1648

    アセトン

    58.08

    0.7898

    73.535

    1.3579

    24.3

    16.144

    16.065

    0.4916

    153.81

    1.63195

    94.249

    1.4581

    24.1

    25.722

    26.286

    2.1461

    119.37

    1.49845

    79.661

    1.4429

    24.3

    21.115

    21.419

    1.4199

    ベンゼン

    78.11

    0.8737

    89.399

    1.4985

    24.2

    26.227

    26.307

    0.3041

    トルエン

    92.13

    0.86694

    106.275

    1.4945

    24.2

    30.965

    30.925

    0.1309

    ヘキサン

    86.17

    0.667

    129.194

    1.3734

    24.2

    29.462

    29.908

    1.4922

    72.10

    0.8061

    89.448

    1.3769

    24.2

    20.569

    20.683

    0.5531

    四塩化炭

    クロロホル


    メチルエチ
    ルケトン

    注)表中の原子屈折の値は、
    「溶剤ポケットブック」のp55、表 3.9 から引用した。

    実験2での測定結果を表 4.2 と 4.3、図 4.1 に示す。
    こちらも、原子屈折率と分子屈折率の測定結果は近い値となっているため、両者の間に加
    成性が確認できる。
    表 4.2 実験2における屈折率の測定結果
    分子量 M

    密度 d

    温度

    分子屈 Rm

    (g/mol)

    (g/cm3)

    (℃)

    (cm3/mol)

    ペンタン

    72.15

    1.3565

    23.9

    ヘキサン

    129.1936

    1.3734

    0.7028

    162.3791

    142.28

    0.7301

    184.37

    0.7565

    M/d

    屈折率 n

    原子屈

    差 %

    0.6262

    115.2188

    25.20627

    25.29

    0.331077

    86.1721

    0.667

    24.2

    29.4617

    29.908

    1.492228

    オクタン

    114.12

    1.3962

    23.9

    39.03366

    39.144

    0.281892

    デカン

    194.8774

    1.4104

    23.9

    48.32469

    48.38

    0.11431...

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