支那において思想家の著書を総括した名称を「諸子」と呼ぶ。この「諸子」のうち「儒家、道家、陰陽家、法家、名家、墨家、従横家、雑家、農家、小説家」の十の流派に分けた思想家の著作を「諸子百家」と言う。各派は、時代背景のうちに社会性をもって現れたとされている。孔子を祖とする「儒家思想」と老子を祖とする「道家思想」の二大思潮が主流であったが、そこから時代的要求に応じて異を唱え分化していった各派の思想を概観していく。
まず「儒家」は、前述の通り孔子を祖としたものである。人間の自覚を初めて取り上げ、人間関係を深く追求した思想は仁が根底である。人生を肯定し、その中における人間の理想が共存であると言い、仁を実践するために、主観的には誠実と愛情により、客観的には社会的秩序を行う事を説いている。
この孔子の精神を継承し、より具体化して説いたのが曾子である。考を仁の基本的行為とされていたものを、考を以て人倫の根本と説いた。
曾子に学び『中庸』の作者とされているのが子思である。『誠は天の道なり、之を誠にするは人の道なり、誠は勉めずして中り、思はずして得』と述べ、誠こそ宇宙の根本原理であり、倫理道徳の統一原理とな...