鏡は、普通では見えない自分の顔や姿を映すものである。古代中国では一般には化粧用具として、白粉や口紅や櫛と共に化粧箱の中に収められていた。それだけでなく、鏡は神霊性を有すると考えられていた。特に道教においては、内篇『荘子』に明鏡止水が道の体得者の象徴とされ、外篇『荘子』では鏡を聖人帝王の権力のシンボルとしている。漢の時代、神仙思想が出現した影響で、鏡はこの世界の政治的支配、帝王権力の支配として神秘化し神霊化した。魏・晋の時代に入ると、深山幽谷に入って自ら道術を修める神仙術が盛んになり、鏡の呪力的な威力が強調された。例えば、山中で修行中、怪物が邪魔に入っても、鏡に照らして正体を暴き、邪魔者を退治したという。また、病人を診察するとき、鏡に写せばその病の箇所が分かったとも言われる。
全国の古墳や遺跡から発掘された鏡には、様々な図像が描かれている。それは仙人であったり、獣であったりする。これは、鏡が伝わってきた古代中国の思想が関係している。古代の人々は、この図像にどんな意味を込めたかったのだろうか。
今回のレポートでは、鏡に描かれている思想についてと、鏡に古代人が意味を込めようとしていた図像にはどのようなものが描かれているのかを調べて見たいと思う。
○鏡と神仙思想
鏡は、普通では見えない自分の顔や姿を映すものである。古代中国では一般には化粧用具として、白粉や口紅や櫛と共に化粧箱の中に収められていた。それだけでなく、鏡は神霊性を有すると考えられていた。特に道教においては、内篇『荘子』に明鏡止水が道の体得者の象徴とされ、外篇『荘子』では鏡を聖人帝王の権力のシンボルとしている。漢の時代、神仙思想が出現した影響で、鏡はこの世界の政治的支配、帝王権力の支配として神秘化し神霊化した。魏・晋の時代に入ると、深山幽谷に入って自ら道術を修める神仙術が盛んになり、鏡の呪力的な威力が強調された。例えば、山中で修行中、怪物が邪魔に入っても、鏡に照らして正体を暴き、邪魔者を退治したという...