序文
ストレスという言葉は,そもそも「ひずみ」を意味する言葉であった。カナダの生理学者セリエ(H.selye,1907~1982)がこれを医学領域に取り入れてストレス学説を提唱した。それをきっかけに,ストレスが医学的な用語として定着したのである。(室伏,2005)
セリエはさまざまなストレッサーにさらされた生体は胸腺リンパの退縮,胃・十二指腸潰瘍,副腎肥大といった共通の身体症状を示すことに注目した。彼は,これらの症状は生命維持のための結果であると考えた。その後,刻々に変わる生体内外の環境変化に全身で反応する姿を系統的にストレスとしてまとめあげた。(佐久間,1992)
生体恒常性の維持という点から見た場合,ストレス刺激は大きく2種類に分けられる。1つは生体恒常性を乱す刺激で,肉体的ストレスと呼ばれる。もう1つは,生体恒常性を将来乱すだろうと生体が判断した刺激である。これは,精神的ストレス刺激と呼ばれ,それまでの経験から危険が身に迫っていると感じさせるものということである。(二木,2008)
視床下部・下垂体・副腎皮膚系をまとめて,HPA系と呼ぶ。このHPA系は,心理的,あるいは身...