【学説】
? 賄賂罪肯定説(前田、中森、川端、西田)
一般的職務権限の同一性の認められない他の職務に転職した後でも、公務員がその「身分性」を有している限り賄賂罪が成立するという見解。
この肯定説の根拠としては以下のものがある。?公務員の身分を失ったものが退職直前に請託を受けて不正な行為をしたことの対価として、退職後に賄賂を収受した場合には事後収賄罪が成立するのに、現に公務員である者が同一の行為を行った場合を不可罰とするわけにはいかない。この場合には、197条の3第3項の条文が「公務員・・・であった者」としているため事後収賄罪には問えない。とすれば、現に公務員である以上は通常の収賄罪を問うしかない。?公務員が転職することは多く、賄賂罪の収受の時期を遅らせて転職後に行えば不可罰となるのでは、公務の信頼は失われる。これに対し、「過去の職務の公正さに対する信頼を害することを理由に処罰することになる」との批判があるが(団藤・曽根)、これに対しては、職務に対する信頼の保護に関し時間的な要素をそこまで厳格に解するべきではなく、公務員によって担われている一連の公務を問題にすべきである、との再批判がある。?「その職務」とは自己の職務の意味であり、現在の職務に限定されない。また、この説を貫くと、公務員がいったん公務を退きその後また公務に就任し、前の職務に関し賄賂を収受した場合にも通常の収賄罪が成立することとならざるを得ない。しかし、この結論は公務を退いている間には、請託および不正行為があった場合に限ってした事後収賄罪が成立しないことと均衡を失するとする批判がある。
公務員の転職前の職務に関する賄賂の収受と賄賂罪の成否(その2)
【学説】
Ⅰ 賄賂罪肯定説(前田、中森、川端、西田)
一般的職務権限の同一性の認められない他の職務に転職した後でも、公務員がその「身分性」を有している限り賄賂罪が成立するという見解。
この肯定説の根拠としては以下のものがある。①公務員の身分を失ったものが退職直前に請託を受けて不正な行為をしたことの対価として、退職後に賄賂を収受した場合には事後収賄罪が成立するのに、現に公務員である者が同一の行為を行った場合を不可罰とするわけにはいかない。この場合には、197条の3第3項の条文が「公務員・・・であった者」としているため事後収賄罪には問えない。とすれば、現に公務員である以上は通常の収賄罪を問うしかない。②公務員が転職することは多く、賄賂罪の収受の時期を遅らせて転職後に行えば不可罰となるのでは、公務の信頼は失われる。これに対し、「過去の職務の公正さに対する信頼を害することを理由に処罰することになる」との批判があるが(団藤・曽根)、これに対しては、職務に対する信頼の保護に関し時間的な要素をそこまで厳格に解するべきではなく、公務員...