我が国において、1990年代に至ってあらわになった「景気の自律性拡張のメカニズム」と「信頼の構造」とが壊されたという事態について、1)その実態を具体的に明らかにし、2)それをもたらした「源流」としての「構造改革」の思想・政策の核心的内容を説明せよ。
「景気の自律性拡張のメカニズム」とは、まず最初に景気浮揚政策の効果、あるいは海外の景気が良くなるなど外部経済改善による効果、あるいは過剰在庫が終了することなどによる効果があると、それによって生産が増加する、収益が増加するなど、企業部門にその効果が伝播する。そうして、企業部門が良くなると、賃金の上昇、雇用の拡大などを通じてその良さは家計部門に伝わっていく。そして所得、雇用の増加があると家計部門は需要を増やす。それが今度は生産の増加、投資の増加を可能にして企業部門に跳ね返っていく、そうしたメカニズムのことである。戦後の日本経済についてみると、1995、96年の拡張期まではそれが確実に存在した。ところが1999年から2000年にかけて、2002年から2004年にかけての拡張期は違う。企業部門の回復が容易には家計部門には伝わらない、という状況が生...